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日本酒の高額転売、悩む蔵元 流通過程で品質低下も

生産量が限られる日本酒の高額転売が相次いでいる(新政酒造や旭酒造の製品)

生産量が限られる日本酒の高額転売が相次ぎ、蔵元が頭を悩ませている。対策に試行錯誤を重ねるが根絶は困難。流通過程での品質低下も懸念され、関係者は「日本酒の伝統的価値への冒瀆(ぼうとく)。入手を望む人の思いにつけ込み、暴利をむさぼるのは許されない」と憤る。

新政酒造(秋田市)の代表銘柄「No.6」は、秋田県産米と自社発祥の「6号酵母」を使う火入れをしない生酒だ。伝統製法にこだわるため生産量は限られ、入手困難な一品として知られる。

新政酒造の代表銘柄「No.6 X-type」(同社提供)=共同

同社は、品質管理を目的に「特約店」と呼ばれる全国約90の販売店にのみ卸すが、スーパーや量販店への流出が頻発。5月中旬、フリーマーケットアプリでは「X-type」(定価3056円)に1万3千円前後の値が付いていた。

高木酒造(山形県村山市)の「十四代」、旭酒造(山口県岩国市)の「獺祭」……。各地の希少酒が標的と化す現状に、ある蔵元は「日本酒ファンが離れかねない事態」と警鐘を鳴らす。

転売業者は、実在する居酒屋を装うなどして特約店から購入するが、酒類販売の免許を持っていれば行為自体に違法性はない。無免許でも、個人間取引は継続性がない限り基本的に自由で、不正転売禁止法がある興行チケットと異なり、規制しづらいのが現状という。

新政酒造は2019年秋、ラベルに特約店名を印字、販路を追跡できる措置を講じた。しかし、特約店名を塗りつぶした商品が出回り、佐藤祐輔社長(46)は「イタチごっこだ」と頭を抱える。

特約店側も①購入本数限定②転売目的の購入禁止を張り紙で呼び掛け――などの対策を取るが、最後は購入者の良心頼みが実情だ。特約店「天洋酒店」(秋田県能代市)の店主、浅野貞博さん(68)は「お客さまを前に疑心暗鬼になるのは、商人として悲しい」とこぼす。

転売の罪深さは、本当に飲みたい人の手に届きにくくなることだけではない。醸造酒の中でも特に品質が変化しやすいとされる日本酒。蔵元らは最適な状態で味わってもらおうと販売方法や温度管理を徹底するが、正規ルートを経ない転売はその努力を「水の泡」にしてしまう。「そうした商品の流通は、企業イメージにも非常にマイナス。蔵元と特約店で地道に対策していくしかない」と佐藤社長は話す。

新潟大日本酒学センターの平田大教授(酵母遺伝学)は「繊細な日本酒の特徴など、酒に関わる全ての人への教育や情報発信が必要だ」と指摘している。〔共同〕

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