岡口判事に44万円賠償命令、侮辱投稿巡り東京地裁

2015年に東京都江戸川区で女子高校生が殺害された事件を巡り、仙台高裁の岡口基一判事(56)=職務停止中=のSNS(交流サイト)の投稿で侮辱され精神的苦痛を受けたとして、遺族の両親が岡口氏に計165万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が27日、東京地裁であった。清野正彦裁判長は原告側の請求を一部認め、計44万円の支払いを命じた。現職判事への賠償命令は異例。
判決などによると、岡口氏は東京高裁判事だった17年、ツイッターに女子高校生について「無残にも殺された」と書き込んだ。両親から抗議を受けると、ブログに「因縁をつけているだけ」などと記載。フェイスブックでも「(両親は)俺を非難するよう洗脳された」とする内容を投稿した。
判決は「裁判官は、裁判所に対する国民の信頼を傷つけないよう慎重に行動すべき義務を負う」とし、岡口氏のツイッターの投稿を「軽率のそしりを免れない不適切な行為だった」と断じた。
そのうえで、フェイスブックについて「事実に反して原告の人格を否定する侮辱的な表現だ」と認定。「内容は相当悪質で、裁判官として一般のSNS利用者とは一線を画する影響力を有していた」として、計44万円の賠償が相当と結論付けた。
岡口氏は一連の投稿を巡って21年に裁判官弾劾裁判所に訴追され、現在も審理が続いている。弾劾裁判の公判で岡口氏は「表現行為が不適当なもので深くおわび申し上げたい」と謝罪した一方、弁護人は「著しい非行行為とはいえない」として、罷免には当たらないと主張した。
判決後に都内で記者会見した遺族の両親は「『洗脳』発言については一定の評価をしてもらったが、率直に言うと残念。控訴するかは相談して決めたい」とした。岡口氏の代理人は「判決を精査して対応を検討する」とコメントした。