袴田事件、再審開始へ 検察側が特別抗告断念
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1966年に静岡県で一家4人が殺害された「袴田事件」を巡り、死刑が確定した袴田巌さん(87)の裁判のやり直しを認めた13日の東京高裁決定について、東京高検は20日、最高裁に特別抗告しないことを発表した。事件発生から約57年、死刑確定から約42年を経て、再審の可否を巡る議論は決着した。
今後、静岡地裁で刑事裁判がやり直され、無罪が言い渡される公算が大きい。
死刑が確定した事件で再審が確定するのは戦後5例目。過去4例は再審公判を経て、83〜89年に無罪が言い渡された。
特別抗告は憲法違反や判例違反がある場合、申し立てられる。東京高検の山元裕史次席検事は20日、「承服しがたい点があるものの、特別抗告の申し立て事由があるとの判断に至らなかった」とのコメントを発表した。
袴田事件の再審請求は異例の経過をたどってきた。2014年の静岡地裁決定は再審開始を認め、逮捕から48年ぶりに袴田さんを釈放。18年に東京高裁が結論を覆し、弁護側が特別抗告した。最高裁は「審理が尽くされていない」と差し戻し、東京高裁が今月13日、再審開始を認める決定を出した。
13日の決定は、袴田さんの確定判決が「犯行時の着衣」とした衣類を巡り、弁護側の実験報告などを「無罪を言い渡すべき明らかな新証拠」と認定した。衣類は発見場所の工場タンク内に捜査機関によって隠匿された可能性が高いとして、捜査機関による捏造(ねつぞう)の疑いに言及した。