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日大前理事長を脱税で起訴、「君臨」支えた集金システム

(更新)

東京地検特捜部は20日、所得税約5200万円を免れたとして日本大学前理事長の田中英寿容疑者(75)を所得税法違反(脱税)罪で起訴し、付属病院を巡る背任事件に端を発した一連の捜査は事実上終結した。自らの権力とマンモス私大が持つビジネス上の魅力を背景に、取引業者との間で「集金システム」を構築。13年を超えた〝長期政権〟を支え続けた利権構造が今後、法廷で明らかにされる。

関係者によると、前理事長は「妻に指示し、税務申告すべき金を申告していなかった」と容疑を認めている。受け取った現金の大半は自宅で保管し、一部は日大出身力士への祝い金などにも充てたという。

スポーツ界の人脈を武器に学内で地歩を固めた前理事長が理事長の座に就いたのは2008年。日大関係者によると、意に沿わぬ幹部を露骨に左遷する「恐怖政治」の半面、従順な部下を重用して体制を固め、5期にわたって再任を果たした。

握った権力は自身の利権づくりに向かった。日大は10年に大学の委託を受けて保険や物品調達などの契約を担う関連会社「日本大学事業部」(東京・世田谷)を全額出資で設立。側近の元理事、井ノ口忠男被告(64)=背任罪で起訴=が直後から幹部に就き、取引業者にリベートを要求した。

日大は学生約7万人を抱え、背任事件の舞台となった医学部付属板橋病院(同・板橋)など4病院を擁する。事業規模の大きさから医療・建設関係を中心に取引を望む業者は多い。リベートを求められた医療関連会社の社員は「取引継続のためにも断り切れなかった」と明かす。

日大事業部が中核に位置した不透明な集金システムに、これまで捜査当局は疑惑の目を向けてきた。

関係者の話では、警視庁が12年ごろ、日大関連施設の工事代金の一部が前理事長に還流している可能性があるとみて捜査。「特捜部内でも歴代の申し送り事項」(検察幹部)だった。しかし、業務上横領や背任など、身分に基づく犯罪行為を疑った捜査当局の動きに進展はなかった。

付属病院を巡る背任事件でも、特捜部は井ノ口被告らと前理事長との間に「不正な取引の計画や内容について報告がなく」(同)、共謀を立証するだけの証拠は得られなかった。

一方、井ノ口被告らは「(前理事長に)現金を渡した」との内容を供述。前理事長宅の家宅捜索で1億円を超える現金が見つかり、違法な蓄財の疑いは深まった。特捜部は銀行の出金記録などの客観証拠から裏付け捜査を進め、11月29日に前理事長の逮捕に踏み切った。

検察幹部は「前理事長は立場を利用し、業者からのリベート受領を繰り返していた。所得隠しこそ事件の本質だ」と語る。

強大な権力基盤を築いた前理事長は逮捕までトップにとどまり続けた。理事長職を引き継いだ加藤直人学長は10日の記者会見で「(前理事長の)逮捕がなければ理事解任には至らなかった」と率直に述べた。

国内最大級の私大で浮き彫りになった深刻なガバナンス(統治)不全。前理事長宅で確認された現金を含め、利益供与の全容が明らかになったとはいえない。長年君臨し続けたトップを取り巻く資金の流れがどこまで解明されるか、来年にも開かれる公判が注目されそうだ。

田中前理事長の起訴内容


起訴状などによると、田中前理事長は日大の関連業者らから受け取ったリベート収入を除外するなどして2018年と20年の所得約1億1800万円を隠し、約5200万円の所得税を脱税したとされる。東京国税局が17日に所得税法違反容疑で告発していた。
特捜部は税務申告などを担ったとされる前理事長の妻についても共謀の可能性があるとみて捜査したが、妻は前理事長の指示に従う立場だったことなどから刑事責任の追及を見送った。

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