「一人でも元気なうちに」 建設石綿、早期救済訴え

建設アスベスト(石綿)訴訟を巡り、原告団と国は18日、和解案で基本合意した。菅義偉首相は原告側に謝罪した。2008年の提訴から13年、長年にわたって早期解決を訴えてきた原告の中には、ハンカチで涙をぬぐう姿もあった。
菅首相は18日午前に官邸で原告らと会い「首相として責任を痛感し、真摯に反省をする」と語り掛けた。原告を代表し、夫と長男を亡くした大坂春子さん(77)が「全ての被害者が救済される制度をつくってほしいと、心から願っています」と訴えた。
夫の良一さんを亡くした神奈川原告団幹事の大園キヨさん(76)は面会後、報道陣に「悔しさとむなしさの13年だった。今もすっきりはしていない」と話した。建材メーカーを含めた基金設立が必要だと強調し「国から企業に働きかけて、一人でも元気なうちに一日も早く安心できるようにしてほしい」と目に涙をためながら語った。
原告の義経若枝さん(73)は菅首相について「しっかりと目を見て謝罪してくれた。気持ちは伝わりました」と安堵の表情。小野寺利孝弁護団長も「誠実な態度で謝罪の言葉を述べていた。原告のみなさんも、満足していたように思えた」と述べた。
国と建材メーカーの責任を認めた17日の最高裁判決を受け、大阪訴訟の弁護団は18日、大阪市内で電話相談会を実施した。朝から電話が鳴りやまず「肺気腫になったが石綿疾患ではないと診断された。どうすればいいか」などと問い合わせが相次いだ。
主催した弁護団の伊藤明子事務局次長は「医療体制の拡充や治療法確立の支援など、国は賠償責任だけでなく、社会的な責任も果たしてほしい」と話した。〔共同〕