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凍結精子で誕生、「親子と認めて」 保存後に性別変更

東京地裁で初弁論

性別変更前に凍結保存した自身の精子を使い、同性のパートナーとの間に子をもうけた女性が、国を相手取って訴訟を起こして血がつながった子との親子関係の成立を求めている。19日に東京地裁で第1回口頭弁論が開かれ、女性側は「子の福祉に反する」と主張。国側は争う姿勢を示した。

性的少数者の子の認知を巡る訴訟は国内で初めてとみられる。戸籍上の性別変更が累計1万人を超え、家族のあり方が多様化するなか、司法の判断が注目される。

提訴したのは40代会社員と30代主婦の女性カップル。訴状によると、女性会社員は心と体の性が一致しない「トランスジェンダー」で、性別適合手術を経て戸籍上の性を男性から女性に変更した。手術前に凍結していた精子を使い、パートナーである主婦が2018年に長女を、20年に次女を産んだ。

同性婚が認められていない日本では、女性同士のカップルは婚姻ができない。このため法律上の親子関係は出産した主婦と女児2人の間に限られている。女性会社員は婚姻外で生まれた子との親子関係を成立させる「認知」を試みたが、自治体は「効力が無い」として届け出を受理しなかった。

女性カップル側は「法律上の親が主婦だけなのは『子の福祉』に反する。硬直的な制度運用で不利益を負っている」と主張。戸籍事務の処理基準を定める国に▽女性会社員が子を認知できる地位にあることの確認▽届け出の不受理で被った損害への賠償――を請求した。

国側は19日の第1回口頭弁論で「届け出の不受理処分の是非は行政訴訟で判断する内容に当たらない」などと反論し、訴えを退けるよう求めた。これとは別に、女性カップルは認知をめぐる訴訟を東京家裁で起こしている。

戸籍上の性別変更は、04年施行の性同一性障害特例法で可能になった。「2人以上の医師が性同一性障害と診断」「20歳以上」など6つある要件をすべて満たすことが必要となる。

司法統計によると、04~20年に計1万301人が戸籍上の性別を変えた。生殖医療の進歩も相まって、裁判で争っている女性カップルのような例は増えていくとみられる。

早稲田大の棚村政行教授(家族法)は「明治時代に作られた民法は性的少数者の家族のかたちを想定していない」と指摘。「社会の多様な受け止めが予想され、合意形成の難しさは否定できないが、立法が進む海外のように日本でも時代の変化を踏まえて法制度の在り方を再検討する必要がある」と話している。

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