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選手村食堂 多様な食文化に対応、復興への思いも

点描 1964→2021

五輪期間中、アスリートの滞在拠点となる選手村。新型コロナウイルスの影響で村外への自由な外出は〝ご法度〟となった。観光や買い物でリフレッシュを図る機会が制限されたからこそ、選手の舌や胃袋を満たし、体調管理にも応える「おもてなし」は欠かせない。

東京・臨海部の選手村には2つの食堂がある。1つが24時間営業の「メインダイニングホール」で約700種類のメニューを提供する。

205カ国・地域の多様な食文化に対応できるよう、洋食やアジア料理だけでなくイスラム教の戒律に沿ったハラル食やベジタリアン向けのコーナーなども充実させた。

第2食堂の「カジュアルダイニング」は東日本大震災の被災地の食材も使い、おにぎりや鉄板焼きなどを振る舞う。安全性への誤解を払拭するため、全ての農産物に安全認証「GAP」(農業生産工程管理)のお墨付きも得た。

運営を監修・助言する帝国ホテルの特別料理顧問、田中健一郎さん(70)は「日本の食文化を発信する場にする」と強調。振る舞われる宮城、岩手、福島各県産の肉や野菜の数々に、大会を「復興五輪」に導きたいとの思いがにじむ。

57年前の選手村でも同ホテルの料理人が3つある食堂のうち1カ所を指揮した。後に総料理長に就く故・村上信夫さんだ。

大使館を訪ね歩くなどして各国の料理について研究を進めるなか、食材の確保が課題になった。ピーク時で1日に肉15トン、野菜6トンが必要とされ、一気に買い占めれば物価の高騰などで都民の生活に影響を及ぼしかねない。

解決策として浮かんだのは、まだなじみの薄かった冷凍食品。開幕まで約1年となる1963年8月、当時の佐藤栄作五輪担当相を同ホテルに招き、試食会を開いた。

生鮮と冷凍の別を知らされないまま口にした佐藤氏の感想は「どちらもおいしい」。国内に冷凍技術が広がる契機にもなった。

熱戦を繰り広げる選手たちの栄養補給の場は今、卓上にアクリル板が設置され、座席数も大幅に減らされている。かつてのような活発な交流は望めないが、最高の結果を後押しするという役割に変わりはない。

(森賀遼太)

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