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私大理事会、権限大幅に残す 改革議論「折衷案」で決着

私立大などを運営する学校法人のガバナンス(統治)改革を議論する文部科学省の特別委員会が22日、報告書を取りまとめた。理事会に強い権限を残しつつ、合併や解散などに限り、諮問機関である評議員会の承認を必須とする折衷案で決着した。後を絶たない私大幹部らの不祥事を抑止できるか、改革の実効性が問われる。

文科省は報告書をもとに今国会での私立学校法改正案の提出を目指す。同省の専門家会議がまとめた改革提言に私学側が猛反発し、同省が新たに特別委を設けるという異例の展開をたどった議論は節目を迎えた。

議論の焦点となったのは、各法人が置く理事会の権限のあり方だ。

現行の私学法は学校法人の自主性を重視し、統治の仕組みは各学校が運営規則で定めることができる。多くの私大は理事会に権限が集中。現在は理事が兼務することも多い評議員会は諮問機関として意見を述べるだけで、理事長らによる不正の抑止には限界があると指摘されてきた。

弁護士や公認会計士らでつくる同省の専門家会議「学校法人ガバナンス改革会議」は昨年12月、学外者のみで構成する評議員会を「最高監督・議決機関」に格上げすることを提言した。中期計画や予算などを決める際には評議員会の承認も必要とし、理事会の権限を相対的に縮小する内容になった。

しかし、その直後に同省が設置した「学校法人制度改革特別委員会」は、評議員会の承認を義務付ける項目を合併や解散など法人の基礎に関わる重大事項に限定した。中期計画や役員報酬などに関する事項を加えることは、委員の過半数を占める私学側の慎重意見が強く、見送った。

特別委は、不正行為をした理事の解任請求権を評議員会に与えることや、理事と評議員の兼務を禁止する案なども示した。理事会へのけん制機能を強化することで不正を抑止する狙いだ。

特別委の報告書は、理事会の権限維持を求める私学側と、評議員会の機能強化を求める専門家会議の提言の折衷案といえる。

ただ法人の合併や解散は頻繁には起きず、経営に関するほとんどの事項は引き続き理事会が決定権を握る。法人運営の実態は現状と大きく変わらないとの見方が出ている。

改革会議メンバーの青山学院大の八田進二名誉教授は、特別委の改革案について「重要事項のほとんどを各法人が自由に決められる現行法からみれば、半歩前進」とした。

その上で、評議員会が理事の選・解任権を持つ社会福祉法人などに比べると改革はなお不十分と指摘。「統治をめぐる社会の動きから学校法人のみが周回遅れになっていることに私学全体がもっと強い危機意識を持つべきだ」と強調した。

日本大理事長が逮捕・起訴された脱税事件や大阪観光大などを運営する学校法人「明浄学院」の元理事長による横領事件など、私学を巡る不祥事は近年相次いでいる。

学校経営に詳しい東京大の両角亜希子教授は「各学校法人は社会から厳しい目が注がれる現状を自分ごととして受け止める必要がある。今回の議論を機に自律的な改善策を提示し、説明していかなければ、再び強い法規制が求められる可能性もある」と話す。

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