福島県葛尾村の復興拠点、6月12日避難指示解除

東京電力福島第1原発事故で放射線量が高く、住民避難が続いている帰還困難区域(約337平方キロ)のうち、福島県葛尾村の特定復興再生拠点区域(復興拠点)は、除染で線量が下がりインフラ整備も進んだため6月12日に避難指示を解除することが決まった。国、県、村が16日、村内で共同記者会見し発表した。
帰還困難区域を巡っては2020年3月にJR常磐線の線路や駅周辺が解除されたが、事故から11年を過ぎ、住民の居住再開につながる初の解除となる。
原発事故で全村避難を強いられた葛尾村は、6年前の16年6月12日に帰還困難区域を除く大部分の避難指示が解除された。記者会見で篠木弘村長は「同じ6月12日に解除することで合意に至った」と説明。住民の中には解除への懸念も残るが、「時間の経過とともにマイナス要素がいっぱいあるので、住民に寄り添って取り組みたい」と理解を求めた。原子力災害現地対策本部長の石井正弘経済産業副大臣も「(解除は)ゴールではなくスタートだ」と述べた。
葛尾村の帰還困難区域は北東部の野行地区(16平方キロ)で、うち6%の復興拠点では今年春ごろの解除を目指して除染やインフラ整備を先行実施、21年11月からは住民の準備宿泊も行われている。村によると、拠点内に住民登録する30世帯82人のうち、帰還意向を示しているのは4世帯8人にとどまっている。
村は今月15日の説明会で住民に避難解除方針を伝えたのに続き、16日には村議会にも説明。その後、国、県、村で協議し解除日程を決めた。
復興拠点を持つ他の5町村では、双葉町と大熊町が6月以降の避難指示解除を準備し、3町村は来年春を予定する。一方で、葛尾村を含めて復興拠点から外れた帰還困難区域は解除の具体的なめどが立っていない。〔共同〕
帰還困難区域と復興拠点
東京電力福島第1原発事故による避難指示区域のうち、帰還困難区域は2012年3月末時点での年間被曝(ひばく)線量が50ミリシーベルト超と高く、立ち入りが原則禁止された。このうちかつての市街地など計約27平方キロが、早期の避難指示解除を目指す特定復興再生拠点区域として政府の認定を受け、国費で除染やインフラ整備を実施。今年春ごろの解除を目指してきた葛尾村、大熊町、双葉町では自宅での居住再開に向けた住民の準備宿泊が始まっている。〔共同〕