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トヨタ社員自殺、高裁が労災認定 上司のパワハラなどで

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2010年に自殺したトヨタ自動車の男性社員(当時40)の妻(50)=愛知県豊田市=が、労災を認めなかった豊田労働基準監督署の処分取り消しを国に求めた訴訟の控訴審判決で、名古屋高裁は16日、上司によるパワーハラスメントや、業務とうつ病発症の因果関係を認定、請求を棄却した一審判決を取り消し、労災を認めた。

古久保正人裁判長は、男性が業務進捗の報告などをするたびに上司2人から大声で叱責されたことを、「社会通念に照らし、許容される範囲を超える精神的攻撃」と判断し、同様の行為が続き心理的負荷は強かったとしてパワハラを認めた。

また、男性の業務が客観的にみて「精神障害を発病させる程度に強度のある心理的負荷を受けていた」と認定、「発病との間に因果関係があると認めるのが相当だ」と指摘した。

判決によると、1990年に入社した男性は08年4月以降、新型プリウスの部品生産ライン立ち上げの主担当となり、09年5月からは並行して別の業務に従事。さらに同年9月からは中国関連業務にも関わるようになった。

男性は09年10月ごろにうつ病となり、10年1月、豊田市の雑木林で首つり自殺した。妻は労災補償を求めたが、豊田労基署は12年、「業務上の疾病に該当しない」として不支給を決めた。

20年7月の一審名古屋地裁は、男性が発症したうつ病について「業務との因果関係は認められない」として、請求を棄却していた。〔共同〕

トヨタ自動車のコメント 会社として、従業員の声を吸い上げ、手を差し伸べることができなかったことは、反省すべきであり、残念。すべての社員が安心して働ける、風通しの良い職場風土を築くよう、努力を続けてまいりたい。

「長い道のりだった」遺族の妻、安堵

2010年に自殺したトヨタ自動車の男性社員(当時40)の労災を認めた16日の名古屋高裁判決後、妻(50)は名古屋市内で記者会見した。一審判決では退けられたパワーハラスメントが認められ、涙ぐみながら「(自殺から)11年は長い道のりだったが、今日を迎えることができてうれしく思う」と安堵の表情を浮かべた。

会見に同席した原告側の加計奈美弁護士によると、厚生労働省が20年6月、業務と精神障害との因果関係を判断する際の基準を変更しており、今回の高裁判決はそれに基づいた判断だという。妻は「やってきたことが無駄ではなかった。トヨタには今後も、働きやすい会社であってほしいと願っている」と話した。〔共同〕

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

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