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解体前〝現場〟で実戦訓練 消防力向上へ企業と協定

 エンジンカッターを使い扉を突き破る訓練をする消防隊員(2020年10月、東京・日本橋)=東京消防庁提供・共同

解体前の建物を消防隊の訓練に活用する動きが広がっている。東京消防庁は建物の解体情報をいち早く把握できる協定を大手不動産会社と締結。結婚式場やデパートといった〝現場〟での実戦さながらの訓練は、火災件数減少による隊員の経験不足を補い、消防力の向上につながると期待されている。

火花を散らしながらエンジンカッターで扉を突き破り、入り組む建物内で縫うようにホースをのばし放水した。

昨年10月、東京・日本橋の元複合商業施設で行われた同庁の訓練。繰り返し使う訓練施設では難しい工程で、隊員約100人と参加した救助課の松浦知哉救助係長(45)は「防火戸が想定よりも厚く貫通できなかった」と振り返った。

消防白書によると、全国の出火件数は減少傾向にある。2019年は約3万7千件で、09年の約5万1千件の70%ほど。必然的に出動も減り、現場からは「若い隊員が育たない」「もっと経験を積みたい」といった声が上がっているという。

こうした危機感を背景に解体前の建物での訓練は全国に広がりつつある。

鹿児島県の阿久根地区消防組合消防本部では結婚式場、愛知県の豊橋市消防本部ではデパートが舞台に。埼玉や滋賀、大阪、山口の各府県でも精密機械工場や小学校、ごみ処理場が活用された。

神奈川県の箱根町消防本部は昨年5月に有名老舗ホテルを活用。田口昌宏署長(57)によると、一部屋のスペースが狭く、ホースののばし方や排煙方法にも工夫が必要だったという。

「電気が消えた真っ暗な状況は火災時そのもの。観光地という場所柄、ホテルや旅館を現場とした訓練は重要だ」と語る。

ただ、解体後の建て替え工事への影響から、訓練に活用できる期間は短く、1回限りというケースがほとんど。解体情報が表に出回ることも少なく、なかなか利用できないのが実情だ。

 ホースをのばし訓練をする消防隊員(2020年10月、東京・日本橋)=東京消防庁提供・共同

その状況を打破しようと、東京消防庁は今年3月22日、解体情報を提供してもらう協定を三井不動産と締結した。

年間2件ほどが見込まれ、同社役員の植田俊さんは「活躍してきた建物が最後に役立つのは幸せなことだ」と強調する。愛知県の豊田市消防本部も同3日に地元建設会社と同様の協定を結んだ。

消防行政に詳しい関西大の永田尚三教授は、10年ほど前から全国的にベテラン世代が退職し若い隊員が増えているとして、救助や消火、救急搬送を的確に行うための知識や技術といった「消防力」の向上が急務と指摘する。

「本番に近い訓練が協定によって恒常的に実施できるようになる。解体情報を各地の消防で把握し、訓練したい消防と協力企業がマッチングできるような仕組みが必要だ」と話した。〔共同〕

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