サイバー犯罪、警察庁が直接捜査 22年度に400人新組織
警察庁は全国のサイバー犯罪を直接捜査する新組織を発足させる。国境を越えて巧妙化するサイバー犯罪に対応するため、自ら捜査にあたる体制を構築する。警察庁は警察行政に特化し直接捜査は都道府県警察が担ってきた戦後の現行警察体制の転換となる。2022年の通常国会に警察法改正案を提出し、同年度中の始動を目指す。

新組織の構成は、全国で発生した重大なサイバー犯罪の捜査を担う「直轄隊」と、それを指揮監督する「サイバー局」の2本柱とする。計400人規模の人員を見込む。
直轄隊は警察庁の地方機関にあたる関東管区警察局内に配置し、デジタル分野に詳しい都道府県警の出向警察官や同庁の技術系職員らで構成する。事件の摘発のほか、国や企業へのサイバー攻撃の実行者の分析などを手がける。事件に応じ都道府県警と共同で捜査する。
サイバー局は指揮監督に加え、情報収集やデジタル証拠の解析といった捜査支援や人材育成などを担う。警察庁内では現在、サイバー犯罪関連の担当部署が金銭目的の犯罪などを扱う生活安全局やテロ対策の警備局などに分散しており、集約する。
小此木八郎国家公安委員長は24日の定例会見で、新組織について「サイバー空間の脅威は極めて深刻だ。実空間と変わらない安全安心が確保されていなければならない」と述べた。
警察庁は発足以来、警察行政の運営に特化してきた。自ら捜査するのは、付属機関で皇室関連の捜査を担う皇宮警察に限られ、直接捜査は各都道府県警察が担ってきた。
だが不正アクセスやコンピューターウイルスなどサイバー攻撃は国内外どこからでも仕掛けられ、被害範囲も都道府県境を越える。
海外組織によるランサムウエア(身代金要求型ウイルス)攻撃など手口も巧妙化が進む。トレンドマイクロによると、ランサムで企業などの情報が盗まれネット上で暴露された件数は19年12月に1カ月で約20件。1年後の20年12月は10倍弱にあたる約190件と急増している。中国やロシアといった国家レベルの関与が疑われる事例も後を絶たない。
海外では米連邦捜査局(FBI)や英国の国家犯罪対策庁(NCA)など国直轄の捜査機関がサイバー捜査を主導することが多い。「最恐のウイルス」と呼ばれた「エモテット」を拡散するグループの摘発など、欧米では国境を越えた捜査で連携する事例も増えている。
日本でも警察庁が捜査の中核になれば、海外機関との連携深化などが見込める。民間の専門人材の活用も図り、サイバー犯罪への対応力の底上げを図る。
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