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ラッコが水族館から消える? 国内残り3匹、高齢化進む

人気者「ラッコ」が、国内の水族館から消滅の危機にひんしている。現在飼育されている3匹はいずれも高齢のため繁殖が望めず、主な生息地である米国からの輸入も規制で途絶えているためだ。ピーク時に122匹いたラッコが日本の水族館から姿を消す日が刻一刻と近づいている。

「かわいくて癒やされた」。三重県鳥羽市の鳥羽水族館でラッコを眺めていた横浜市の会社員、伊波萌さんが屈託のない笑顔を見せた。

同館は1983年からラッコを飼育。最も多いときで6匹を育てていたが、現在はともに雌の「メイ」(18歳)と「キラ」(14歳)の2匹まで減った。飼育下では20歳前後とされる平均寿命を考えれば、残された時間は長いとはいえない。

国内のラッコは、福岡市の水族館「マリンワールド海の中道」で育てられている、キラの兄に当たる「リロ」(15歳)と合わせて現在3匹。鳥羽水族館に遊びに来ていた同県伊勢市の主婦(46)は「水族館でラッコを見られなくなったら、子どもたちがかわいそう」と話した。

日本動物園水族館協会(東京)によると、国内で最初にラッコを飼育したのは、82年の静岡県沼津市の「伊豆・三津シーパラダイス」。〝集客力〟にたけていることから各地の水族館が飼い始め、ピーク時の94年には全国の28施設で計122匹が展示された。

だが、その後は交尾がうまくいかなかったり、母乳が出なかったりといった事象が各地で起き、次第に減少。2021年には国内で繁殖が期待されていた唯一のつがいのうち雌が死に、国内での増殖は絶望的となった。

毛皮目当ての乱獲や、1989年に米アラスカ沖で起きたタンカー事故の影響で野生のラッコも減少。日本ではそもそも捕獲が禁止されていたが、2003年を最後に輸入も途絶えた。

鳥羽水族館でラッコの飼育を担当する石原良浩さんは、交尾がうまくいかなくなった理由は「はっきりとは分からない」としつつ、一つの可能性として雄の繁殖能力の低下を挙げる。雄の成獣は自分の子どもでも攻撃や交尾の対象とする可能性があるため、他と水槽を分けて飼育するのが一般的で「本能が薄れたのでは」と指摘する。

須磨海浜水族園(神戸市)の「明日花」は22年5月、23歳の長寿を全うした。飼育担当の村本ももよさんは「普段からいろいろな種類の餌を与えていたことが長生きの一因になったかもしれない」と分析するが、繁殖に向けた打開策までは見いだせなかった。

ただ、暗いニュースばかりではない。北海道沖で野生のラッコの姿が再び確認されるようになったのだ。石原さんは「海にごみを捨てたりせず、ラッコが安心して暮らせる環境を守ってほしい」と訴えている。〔共同〕

▼ラッコ 食肉目イタチ科に分類される海生哺乳類。主な生息地は北太平洋沿岸。体長100〜145センチ、体重15〜45キロで、海にすむ哺乳類の中で最も小さい。皮下脂肪が薄く、1日に体重の約3割もの海産物を食べて体温を維持している。あおむけの姿勢で泳いだり、腹の上で貝などをたたき割ったりする姿が人気。
18世紀以降、ラッコの良質な毛皮を求めた乱獲で個体数が減少し、2000年、国際自然保護連合(IUCN)が絶滅危惧種に指定した。日本では臘虎膃肭獣(らっこおっとせい)猟獲取締法で捕獲が禁じられており、現在は米国も輸出を原則禁止している。〔共同〕
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