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建設石綿、全面救済へ制度化急ぐ 被害者増へ対応課題

(更新)
「建設アスベスト訴訟」の最高裁判決を受け、垂れ幕を掲げる原告団(17日午後、最高裁前)

アスベスト(石綿)による健康被害を訴える元建設作業員らが起こした訴訟で、最高裁は17日、国と建材メーカーの責任を認める統一判断を示した。石綿は潜伏期間の長さから「静かな時限爆弾」と呼ばれ、被害者は今後も増え続ける見通し。速やかな救済を実現する制度設計が急務になる。

中皮腫や肺がんなどを発症する危険性がある石綿は、潜伏期間が15~50年と長い。中皮腫の年間死者数は2017年時点で1555人で、1995年の約3倍に増えた。国土交通省の推計では、石綿建材を用いた可能性がある民間建築物の解体は2028年にピークの10万棟に達する。

厚生労働省によると、石綿関連の労災認定は今も年1千件前後に上る。過去に石綿が使われていた期間や潜伏期間の長さを考えると、今後も長期にわたって多数の被害者が出続ける可能性が高く、被害者は数万人規模に及ぶ恐れもある。

石綿工場の労働者については14年の「泉南アスベスト訴訟」の最高裁判決で国の賠償責任が確定し、訴訟上の和解によって国が賠償する枠組みが作られた。一方で建設現場で働く作業員の救済方法は、労災認定や、業務外での発症を対象とする石綿健康被害救済法が主流だった。休業補償や医療費などは支払われるものの苦痛への慰謝料は考慮されておらず、より手厚い救済措置の必要性が指摘されてきた。

17日の最高裁判決を受け、政府は原告に最大1300万円の和解金を支払う方針だ。救済策を検討してきた与党のPT(プロジェクトチーム)がとりまとめた案に沿った内容で、PTの野田毅座長は17日、原告側も同意したと明らかにした。

厚労省はさらに具体的な補償水準や支払いのスキーム、財源負担のあり方の検討を急ぐ。田村憲久厚労相は「早期の解決に向けてしっかりと対応したい」とコメントした。

加藤勝信官房長官も判決を「重く受け止める」と表明し「(原告以外の)潜在的な被害者の把握や周知についても、しっかりと検討したい」と強調した。国にとって、増え続ける被害者に対する包括的な救済措置の制度設計が急務となる。

一方、国と同様に賠償責任が認定されたメーカーの具体的な賠償負担をめぐっては、対象企業の特定や、各社の支出割合の算定が課題となる。最高裁は17日の判決理由で、建材の市場占有率(シェア)や流通期間などに基づいて責任のあり方を検討することについて「相応の合理性がある」と指摘した。

もっとも原告側からは「ゼネコンなどと比べ建材メーカーは横のつながりが弱い。業界内の合意形成が滞る恐れがある」との指摘も出ている。すでに廃業したメーカーもあり、メーカーにどこまで賠償を求められるかも今後の焦点だ。

立命館大の吉村良一名誉教授(環境法)は「最高裁が国、建材メーカーの責任について判断を示し、救済に向けた土台が作られた」と評価したうえで「メーカーは賠償責任が認められた企業以外も健康被害を生んでいた可能性が排除できない。一定のシェアを持つ企業が財源を負担し、速やかな救済を図ることで問題の解決が実現する」と話した。

アスベスト(石綿) 細かい繊維状の天然鉱物。熱や摩擦に強く、安価なことから「奇跡の鉱物」と呼ばれ、建材や電気製品、自動車部品などに広く使われた。2005年に兵庫県尼崎市のクボタ旧神崎工場の周辺で健康被害が発覚し、06年に石綿健康被害救済法が施行。世界的に規制対象となっており、日本では同年に製造・使用が全面禁止された。

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