再婚後出産なら現夫の子 法制審、嫡出推定見直し答申

法制審議会(会長・井田良中央大大学院教授)は14日、子どもの父親を決める「嫡出推定」を見直す民法改正要綱を古川禎久法相に答申した。離婚後300日以内に生まれた子は前夫の子と推定する規定は維持した一方、女性が出産時点で再婚していれば現夫の子とする例外を設ける。
離婚した女性が別の男性との子どもを産んだ場合に前夫の子となるのを避けるため出生届を出さず、子どもが無戸籍になるのを避ける狙い。女性は離婚して100日間は再婚できないとした規定は撤廃する。嫡出推定の見直しは明治時代の民法制定以来初めて。政府は2022年度以降の法案提出を目指す。
民法は父親を早く確定して子どもの福祉を守るため、離婚後300日以内の子は前夫の子、結婚から200日を過ぎた後に生まれた子は現夫の子と推定すると定めている。
法務省の調査では、今年1月時点の無戸籍者825人のうち約7割が出生届を出さなかった理由に嫡出推定を挙げた。出産時に再婚していれば離婚後300日規定の例外にすることで、こうした問題の解消を図る。
現行民法では、女性が離婚直後に再婚してから201~300日後に出産すれば、父親の推定が前夫と現夫で重なってしまう。これが100日間の再婚禁止期間が設けられていた理由だったが、今回の見直しで重複はなくなるため削除する。
嫡出推定を否認するためには家庭裁判所への調停申し立てなどが必要だが、母親や子どもには認められていない。父親に協力を得ることが難しいケースもあるため母子にも権利を広げ、申し立ての期限も延長する。
また、法制審は「しつけ」を口実に虐待が正当化されているとして、民法の「懲戒権」規定を削除し、体罰の禁止を明文化した。子の人格尊重義務も盛り込んだ。
25年度までに民事裁判の全手続きをIT化する民事訴訟法改正のほか、裁判外紛争解決手続き(ADR)の合意に強制執行を可能とする法改正、マネーロンダリング(資金洗浄)を厳罰化する要綱も答申した。〔共同〕