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五輪汚職 元ADKHD社長「助けて」、元理事に依頼指摘

東京五輪・パラリンピックを巡る汚職事件で、大会組織委員会元理事の高橋治之被告(78)への贈賄罪に問われた広告大手ADKホールディングス(HD)元社長、植野伸一被告(69)は17日、東京地裁で開かれた初公判で起訴内容を認めた。検察側は冒頭陳述で、植野元社長らが元理事に対し、大会のスポンサー契約に関われるよう便宜供与の依頼を繰り返した実態を指摘した。

スポンサーの選定を巡っては、組織委が広告最大手の電通と「マーケティング専任代理店」契約を結び、同社が募集業務を一手に担った。一方で電通が他の広告会社を「販売協力代理店」に指定し、一部の業務を再委託する仕組みがあった。

検察側は冒頭陳述で、植野元社長らが開催決定前の2013年から協力代理店の座を狙い、「スポーツビジネスの第一人者」とされた高橋元理事への接触を始めたと強調した。

検察側によると、ADKHDで五輪事業を担当する元部長補佐らは高橋元理事を「キーマン」と見込み、13年7月に月50万円を支払うコンサルティング契約を結んだ。

高橋元理事の組織委理事の就任が決まると、当時の事業統括部長らが再三、元理事を訪れ、協力代理店への選任に関する口利きを要望。植野元社長は逐一、元部長らから報告を受け、了承したという。

植野元社長は14年、高橋元理事が同席した会食で組織委の竹田恒和副会長(当時)に協力を依頼。15年の別の会食では元理事が森喜朗会長(同)に後押しを打診したこともあったという。

高橋元理事は電通側に自身を「組織委のマーケティング担当理事だ」と説明し、ADKHDの指定を求めた。同社は15年5月、組織委の承認を経て協力代理店契約を実現させた。

しかし、交渉先の企業側が高額な協賛金に難色を示すなど契約は難航。ADKHDはスポンサー獲得の見通しが立たない状況に焦りを募らせ、再び高橋元理事の〝手腕〟を頼った。

「どうか助けてください」。18年3月、植野元社長は会食の場でそう切り出し、高橋元理事は「わかった」と応じたという。元理事は電通側に駐車場大手との契約業務をADKHDに委託するよう促し、18年7月ごろに同社が業務を引き受けることが決まった。

さらに検察側は、ADKHDの顧問弁護士が19年、こうした高橋元理事への依頼が贈賄罪に当たる可能性があると指摘していたと主張。植野元社長らが違法性を認識しながら支払いを続けたとした。

17日の初公判は午前10時すぎに始まった。植野元社長は黒のスーツに紺のネクタイ姿で出廷し、「間違いありません」と起訴内容を認めた。閉廷後は「起訴内容を真摯に受け止め、次回以降の公判にも誠意をもって臨む」とコメントを発表した。

一連の汚職事件では計15人が起訴された。高橋元理事はADKHDなど5ルートで総額約1億9800万円の金銭を受領した受託収賄罪に問われたが、起訴内容を全面的に否認し、初公判のメドは立っていない。贈賄側では紳士服大手のAOKIHDの元会長ら3人の公判が先行し、4月21日に判決が言い渡される。

五輪汚職事件のADKルート 広告大手ADKホールディングス(HD)元社長、植野伸一被告は元事業統括部長ら2人と共謀し、スポンサー契約業務に関与できる「販売協力代理店」指定の後押しの見返りなどとして19年11月〜22年1月、大会組織委員会元理事の高橋治之被告に計約1400万円を提供したとして、贈賄罪で起訴された。公訴時効(3年)が成立した分も含め、元理事側に計約4700万円を渡したとされる。

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