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冬の夜なら被害最悪 日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震

(更新)

内閣府の有識者検討会は21日、太平洋の岩手県沖から北海道沖にかけて日本海溝・千島海溝沿いで起きるマグニチュード(M)9クラスの巨大地震について被害想定を公表した。沿岸部を震度6強~7の揺れが襲い、30メートル近い津波が押し寄せる。最悪の場合、日本海溝モデルの死者は19万9000人、経済被害は31兆円に上ると推計している。

千島海溝地震、北海道で27メートルの津波も

千島海溝モデルは北海道の襟裳岬の東方沖を想定震源域とし、北海道厚岸町は震度7、えりも町は震度6強の揺れに襲われるとしている。

えりも町の津波は最大27.9メートルとなり、根室市や釧路市にも10~20メートル以上の津波が押し寄せる。早いところでは地震発生から20分前後で高さ1メートルの津波が到達するとされ、避難の時間は限られる。

被害想定は地震発生の時期や時間帯によって「夏の昼」「冬の夕方」「冬の深夜」の3パターンに分けて検討された。

死者数は冬の深夜が最大となり、1道6県で約10万人に上る。就寝中に倒壊建物の下敷きになったり、積雪や凍結によって津波からの避難が遅れたりするリスクが高まる。

極寒の地では、津波に巻き込まれてぬれたままの重傷者が低体温症によって死亡する恐れもある。屋外の高台などに避難した後、体を温めるといった対処が必要になる人は約2万2000人と推計している。

建物の全壊棟数は、火災による焼失が増える冬の夕方が最大の約8万4000棟。積雪の重さによって建物の被害が増えることも考慮している。津波とともに流氷が押し寄せた場合は建物被害がさらに増えることもある。

地震発生1日後の避難者は約48万7000人に上り、1週間後で24万人以上、1カ月後も23万人以上が避難生活を余儀なくされる。

1週間後の時点で上水道が利用できない人は約19万6000人、下水道の利用が困難となるのは約72万9000人、停電は約8万4000軒。道路や鉄道などの交通網も寸断される。

建物やインフラの被災、生産・サービスの低下などによる経済的被害は、被災地外も含めて約16兆7000億円に上るとした。

日本海溝地震、低体温4.2万人に対処必要

日本海溝モデルは岩手県沖から北海道日高地方の沖合を震源域として設定している。青森県と岩手県で震度6強を観測し、えりも町は最大23メートルの津波に襲われるとされている。

えりも町や青森県の東通村、六ケ所村には地震発生から10分前後で高さ1メートルの津波が到達。東日本大震災で大きな被害の出た岩手県の釜石市や大槌町にも20分ほどで押し寄せるという。

千島海溝モデルと同様、冬の深夜に地震が発生し、津波からの避難が遅れた場合に死者数は最大となり、1道6県で計約19万9000人に上る。ほぼ全てが津波による犠牲者を想定している。

屋外避難で低体温症への対処が必要になる人は約4万2000人と見込む。

建物の全壊棟数は約22万棟。上水道を利用できない人は地震発生1週間後でも約23万8000人、下水道の利用に支障をきたす人は約294万5000人に上る。停電軒数は22万軒、固定電話は16万回線以上が不通となる。

経済的な被害は建物やインフラの被災で約25兆3000億円、生産・サービスの低下により6兆円とし、全体で計31兆3000億円と推計している。

有識者検討会は、津波避難ビル・タワーなどの整備が進み、地震発生後の早期避難が実現できれば死者は約8割減らせると見込んでいる。避難先として活用できる建物を増やし、公園などに防寒具を備蓄するといった対策により、低体温症のリスクも減らすことができる。

想定している巨大地震が起きた場合、大津波による住宅などの流失を避けるのは難しい。被災後の避難生活、事業の継続やインフラ・ライフラインの復旧、地域の復興を見据え、行政、企業、住民がそれぞれの備えを進める必要がある。

千島海溝でM8.8、30年以内の確率は最大40%


日本海溝・千島海溝沿いのプレート境界では過去に繰り返し大地震が発生し、東北や北海道の太平洋沿岸に津波被害をもたらしてきた。現在の科学ではいつ、どこで、どんな規模の地震が発生するかを正確に予測することはできず、想定される地震を基に備えを急ぐ必要がある。

日本海溝と千島海溝は、陸側の北米プレートの下に海側の太平洋プレートが潜り込む境界にあたる。海側プレートに引きずられた陸側プレートがひずみに耐えられずに跳ね上がると大きな地震が起きる。
政府の中央防災会議は2006年、日本海溝・千島海溝沿いでマグニチュード(M)8級の大地震が発生する可能性を8パターンに分けて検討した結果を公表した。宮城県沖の日本海溝ではM8.2の地震を想定し、90~290人が死亡するとしていた。

ところが日本海溝沿いで11年3月に発生した東日本大震災では、パターン分けした3つの想定震源域をまたぐ形でプレートが動き、地震の規模はM9に達した。沿岸部に大津波が押し寄せ、死者・行方不明者は2万人を超えた。

今回、内閣府の有識者検討会が公表した日本海溝地震の被害想定は、東日本大震災で大きな動きがなかった海溝北部でM9級の地震が起きたと仮定している。

別の組織である政府の地震調査委員会は21年1月1日時点の評価として、30年以内に日本海溝で東日本大震災のようなM9級の地震が起きる確率はほぼ0%としている。ただ、青森県や岩手県の沖合でM7.9の地震が起きる確率は最大30%と算定している。

千島海溝では300~400年の間隔でM9前後の地震が発生してきたことがわかっている。直近は江戸時代の1600年代に遡り、すでに400年以上たっている。

地震調査委によると、千島海溝でM8.8以上の地震が発生する確率は30年以内に最大40%。根室沖でM7.8~8.5の地震が起きる確率は80%程度とされる。

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