再婚後出産、現夫の子に 嫡出推定改正案を閣議決定
政府は14日、社会問題になっている子どもの無戸籍状態を防ぐため、父親を決める「嫡出推定」を見直す民法改正案を閣議決定した。離婚後300日以内に生まれた子を前夫の子と推定する規定は維持する一方、女性が出産時点で再婚していれば現夫の子とする例外を設ける。
嫡出推定の見直しは1898(明治31)年の民法施行以来初めて。女性は離婚後100日間は再婚できないとの規定は撤廃する。今国会での成立を目指す。
夫のドメスティックバイオレンス(DV)から逃れるなどした女性が離婚成立後に別の男性との子を産み、300日規定を根拠に前夫の子とされることを避けて出生届を出さず、子どもが無戸籍になるケースが問題になっている。出産時に再婚していれば現夫の子とすることで、この問題の防止を図る。
現行民法の嫡出推定は、離婚後300日以内の子は前夫の子、結婚から200日を過ぎた後の子は現夫の子としている。法務省の調査では、今年8月時点の無戸籍者793人のうち約7割は、出生届を出さなかった理由が「嫡出推定」だった。
現行の規定では、仮に離婚直後に再婚した場合、再婚から200日経過後~離婚から300日以内の間に生まれた子どもに関し、前夫と現夫のどちらも父親と推定されてしまう事態が生じる。このため女性に100日間の再婚禁止期間が設けられているが、今回の見直しにより父親推定の重複はなくなるため、再婚禁止の規定は削除する。
現在は裁判所への嫡出否認の申し立てを父親にしか認めていないが、母親・子どもにも権利を拡大。申し立て期間も出生を知って1年以内から、原則3年に延ばす。
これらの改正案が成立すれば、公布から1年6カ月以内に施行。嫡出推定の見直しは、施行日より後に生まれた子どもに適用される。
改正案には、親権者に子どもを戒めることを認める「懲戒権」の削除も盛り込まれた。「しつけ」を口実に虐待が正当化されかねないためで、体罰や「健全な発達に有害な言動」も許されないと明記した。〔共同〕