被災マンション建て替え 「同意」緩和でも残るハードル - 日本経済新聞
/

被災マンション建て替え 「同意」緩和でも残るハードル

大規模災害からの迅速な復興を目指す「被災マンション法」の見直しが法制審議会で始まった。取り壊しなどに所有者の8割以上の同意が必要との要件を緩和する方向だが、2016年の熊本地震で被災したマンションの関係者からは、同意要件以外でのハードルもあり、復興に向けより使い勝手のいい制度改正を望む声が上がる。

16年4月16日未明に襲った2回目の震度7の地震で、熊本市西区のマンション5階に住んでいた福田司明さんは跳び起きた。被害状況を確認すると、1階にあったアルミ製の貯水槽が土台だけ残し、四散していた。建物は約30センチ傾き、ベッドから起きるとクラクラし、丸いものを床に置くと転がった。罹災(りさい)証明で「全壊」とされた。

「専門家がいないと何も分からなかった」。マンションの建替組合の理事長を務めた福田さんは当時をそう振り返る。管理組合役員の知人のつてで、福岡市で不動産事業を営む樋口繁樹さんをアドバイザーに迎えた。17年9月に建て替えを決議し、建替組合を結成した。大手デベロッパーも参画し、平均1300万円ほどの負担で新たなマンションに建て替えた。

活用したのは被災マンション法ではなく、マンション建て替え円滑化法だ。樋口さんは「被災マンション法は組合や法人をつくる仕組みがない。建て替え法と同等の機能が欲しい」と話す。福田さんは「被災後、どうしたらいいかのガイドラインもない。こういう専門家がいるという紹介ぐらいはあってもいいのでは」と被災者に寄り添った制度を求めた。

被災マンション法は1995年の阪神大震災を機に取り壊しや敷地売却を進めるため制定。2011年の東日本大震災を受け、全員の同意が必要だった要件を5分の4に緩和した。熊本地震も対象となった。法制審議会は合意要件を3分の2とする案や、敷地売却を決議できる期間の延長などを検討する。

熊本地震では、被災マンション法で合意形成したものの、別の課題に直面したマンションもあった。1階部分の柱が折れ曲がり、全壊となった熊本市西区のマンションは要件を満たし、取り壊しを決めた。しかし、公費解体をする段階で問題が生じた。

自治体が主体で家屋などを撤去する公費解体制度は、所有者の同意が前提となる。このマンションでは、行方不明者1人と、部屋の中の私有物を巡り反対する1人の同意が得られなかった。さまざまな法的手続きに時間を要し、16年12月の取り壊し決議から、実際の公費解体開始まで1年以上がかかった。

管理組合のサポートをした梶浦明裕弁護士は「決議要件の緩和の検討は歓迎するが、実質的に全員の同意が必要な公費解体や室内の動産をどうするかといった問題が残る。障壁をなくし、スムーズに進む制度となるよう議論してほしい」と語った。〔共同〕

春割ですべての記事が読み放題
有料会員が2カ月無料

関連トピック

トピックをフォローすると、新着情報のチェックやまとめ読みがしやすくなります。

関連企業・業界

セレクション

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン

権限不足のため、フォローできません