断水に備え、広がる井戸活用 地震に強く迅速給水
災害などで断水した際に備え、個人や民間所有の井戸を使えるよう自治体が協定を結ぶ取り組みが広がっている。水道よりも構造上、地震に強いのが特長だ。給水所だけでは対応しきれない生活用水の迅速な供給源として注目されている。

14日で「前震」から6年となる2016年4月の熊本地震では、熊本市全域で断水した。水道水の100%を地下水で賄っているが、「本震」を含めた2度の大きな揺れで水道管がひび割れして漏水するなどした。
飲料水は支援物資を充てたが、トイレや洗濯に使う生活用水の不足が問題に。井戸を持つ企業や病院、個人らが自主的に井戸を開放した。市水保全課の永田努課長は「水が当たり前の存在でないことに気付いた」と振り返る。
地面と平行に埋設される水道管と異なり、垂直に掘って取水する井戸は地震が起きても破損しにくい。熊本市は17年、民間管理の井戸水を災害時に提供してもらう協定を締結。現在は95基が登録されており、市ホームページや携帯電話アプリで場所を把握できる。
肥後銀行(熊本市)は地震後、県内10支店の敷地内に井戸をつくった。事業継続計画(BCP)の一環で、協定により災害時は誰でも利用可能。平時は小中学校の防災・環境教育の場として活用している。
21年10月「水管橋」と呼ばれる送水管の一部が崩落した和歌山市。つり材が腐食で切れたことが原因とみられ、約6万戸が断水した際には「災害時協力井戸」として登録している民間井戸23基を開放した。
登録は市内全地区の一部にとどまっており、市は今後拡大を目指す。一方、所有者からは「利用時に不特定多数の人の出入りが心配だ」との声が上がるという。市地域安全課の田尻和正課長は「井戸のほとんどは個人の所有。助け合うという意識が大切だ」と訴えた。〔共同〕