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国民審査を受ける最高裁裁判官11人 関与した判決など

最高裁裁判官の国民審査が31日、衆院選の投票と同時に全国の投票所で行われる。「憲法の番人」として適切かどうかを、国民が直接チェックする唯一の機会だ。衆院選と同じく20日から期日前投票ができる。今回審査を受けるのは、2017年10月の前回衆院選後に任命され、在職中の11氏。年齢は投票日時点。

国民審査は憲法79条で定められている。辞めさせるべきだと考える裁判官に「×」を記入し、信任する場合は何も書かない。「×」以外を書くと全て無効となる。有効投票の過半数が「×」になった裁判官は罷免され、5年間は最高裁裁判官に復帰できない。

初めて審査が行われた1949年以降、過去24回で延べ179人が審査対象となり、罷免例はない。18年1月に就任した宮崎裕子氏は今年7月、審査を受ける機会がないまま定年退官した。制度の実効性を疑問視し、審査方法の見直しを求める意見もある。

11氏にアンケート


国民審査を受ける11人の裁判官に実施したアンケートの主な回答を、最高裁で関与した主な裁判や略歴とともに、告示順で掲載する。
▼質問項目
①最高裁裁判官としての信条、大切にしていること、心構え
②自らの個性、信念が最も体現したと感じる裁判または就任前の仕事
③夫婦別姓や同性婚を巡る裁判が起きている。社会の変化や価値観の多様化に伴うこうした国民の声の高まりに対し、裁判官はどう向き合うべきか
④法的紛争がグローバル化する中、日本の裁判所が果たすべき役割

深山 卓也氏

みやま・たくや 東京大法卒。82年判事補。東京高裁長官を経て、18年最高裁判事。67歳。

▼関与した裁判 建設アスベスト訴訟で、国と建材メーカーの責任を認めた判決の裁判長(21年5月)

▼回答

①大切なのは、予断なく当事者の主張を傾聴し、背景にある社会事情や国民の意識の把握に努め、どのような解釈が事案の公正かつ妥当な解決につながるかを探究することだ。

②結果的には、関与したすべての裁判に私の個性や信念が体現されているはずで、一つだけ挙げることは難しいといわざるを得ない。

③一般論としては、裁判官はその判断に当たり、社会の変化や価値観の多様化を含む紛争の背景にある社会事情や国民の意識を十分考慮する必要がある。

④国際的な法的紛争がわが国の裁判所に提起された場合には、紛争の背景にある国際的商取引などの実情を十分に理解した上で、国際的に通用する判断を示す必要がある。

岡 正晶氏

おか・まさあき 東京大法卒。82年弁護士。第一東京弁護士会会長を経て、21年最高裁判事。65歳。

▼関与した裁判 (就任後間もないため特になし)

▼回答

①従うべき「良心」の充実・向上に努め、「独立」はするが独善に陥らないよう自戒し、記録・資料をよく読み、自分の頭でよく考え、わかりやすく自分の意見を言い、同僚裁判官と多面的で深みのある熟議を尽くす。

②法制審議会部会の委員として「債権法改正」の議論に関わった。他人の意見をよく聞きしっかり考えること、「結論・成果物」として何がベストか客観的に考えることの重要さなどを実感しつつ、自分の個性を体現できた。

③個別事件として最高裁に係属する案件と思われる。そこで熟慮し、審議を踏まえ、私の意見を固める。

④こういう理由でこの国などのルールを適用するなどと分かりやすく判示し、それを海外に発信するなどして国際的な協調・統合を進めることが有益だ。

宇賀 克也氏

うが・かつや 東京大法卒。81年東大助教授。東大大学院教授を経て、19年最高裁判事。66歳。

▼関与した裁判 夫婦同姓の規定を巡る大法廷決定で「違憲」の反対意見(21年6月)

▼回答

①予断を持たずに耳を傾け、公正中立な立場から真摯に取り組むよう努めてきた。最後は良心と法解釈に基づき判断するが、同僚裁判官の意見を謙虚に聴く姿勢も重要だ。

②(判例を60年ぶりに変更した)20年11月25日の大法廷判決。公法学者として、地方議会の議員に対する出席停止の懲罰の適否を司法審査の対象外とすることには、かねて疑問を抱いていた。

③夫婦同氏制度についての考え方は最近の大法廷決定で詳細に述べた。今後も夫婦別姓や同性婚を巡る訴訟を審理する場合、判決などで意見を示したい。

④今後もグローバルな紛争は増加すると思う。司法研修所での研修の充実などにより、対応できる人材の育成を図る必要がある。

堺 徹氏

さかい・とおる 東京大法卒。84年検事。東京高検検事長を経て、21年最高裁判事。63歳。

▼関与した裁判 (就任後間もないため特になし)

▼回答

①当事者の言い分に十分耳を傾け、謙虚な姿勢で事件に向き合うことが信条。結論が社会での正義の観念とずれず、結論に至った筋道を分かりやすく示していることが肝要だ。

②検察庁勤務時、取り調べの録音・録画の試行を推進し、デジタルデータの収集・保管・分析を行う部署の立ち上げに深く関与した。供述証拠に頼りすぎずに客観的証拠を活用できる環境づくりに努めた。

③多様性を認め合うこと自体に対して否定的な考え方は少なくなってきていると思うが、どの程度認め合うかは様々な意見がある。当事者の主張や様々な意見に耳を傾け、良心に従って判断する。

④民事分野、家事分野、刑事分野のいずれでも、人材育成などで国際化への対応力を十分強化し、適正妥当に解決する役割を果たしていくことが重要だ。

林 道晴氏

はやし・みちはる 東京大法卒。82年判事補。東京高裁長官を経て、19年最高裁判事。64歳。

▼関与した裁判 袴田事件の第2次再審請求で、再審開始を認めない高裁決定を取り消し、審理を高裁に差し戻した決定の裁判長(20年12月)

▼回答

①多角的な観点からアプローチし、紛争や事件の実態に適合する解決や判断をするように努力していきたい。そのために、好奇心を生かしていろいろなことに興味を持つようにしている。

②(最高裁経理局長時代に)東日本大震災に遭遇し、非常時の裁判所の在り方について、改めて問題意識を深めることとなったことが印象に残っている。

③一般論としては、社会の変化、価値観の多様化や、それに伴う国民の声の高まりを十分踏まえて、事件に向き合っていきたい。

④グローバルに通用するような解決のためには、少なくとも国際的な事件に特有な事情、事件処理に必要な感覚を身につけていく工夫が必要だ。

岡村 和美氏

おかむら・かずみ 早稲田大法卒。83年弁護士。消費者庁長官を経て、19年最高裁判事。63歳。

▼関与した裁判 夫婦同姓の規定を巡る大法廷決定で「規定が合理性を欠き、国会の立法裁量の範囲を超えるものと断じることは困難だ」とする補足意見(21年6月)

▼回答

①公正な裁判のため、予断を持たず、誠実に、事件に取り組む。事案を大きな視野で捉え、論点を深く検討することで、適正妥当な判断に至りたい。

②法務省で人権擁護の仕事に取り組んだことを挙げたい。多くの方々と協働し、例えばヘイトスピーチ抑止の活動などに信念をもって取り組んだ。

③社会の変化に敏感でありたい。個別事件では、国民の意識の変化・公平性・将来への影響・法的安定性なども考慮し、事案の判断に当たるべきだ。

④引き続き、グローバリゼーションの進展に対応する効率的な処理体制(人材育成、専門家の助言を得る仕組みなど)の整備を進めていく必要がある。

三浦 守氏

みうら・まもる 東京大法卒。82年検事。大阪高検検事長を経て、18年最高裁判事。65歳。

▼関与した裁判 19年参院選の「1票の格差」は違憲状態だったとする意見(20年11月)

▼回答

①高い壇から見下ろす姿勢ではなく、当事者の立場や思いを理解し、主張に十分耳を傾けることが何より大切だ。

②裁判は、合議体の裁判官の議論によって結論を得るもので、1人の個性や信念が体現されるとはいいにくいように思う。もちろん、裁判に付した私の個別意見は、全て私自身の信念に基づくものだ。

③対立する立場や様々な意見がみられる。主張に十分耳を傾け、広い視野の下に、多角的な検討と深い洞察に基づき法的な判断を適切に行うべきだ。

④国境を越えて、法の支配と権利利益の救済という責任を果たすことが求められる。紛争の実情を把握し、外国の法制度なども踏まえつつ、広い視野の下に法的判断を適切に行うべきだ。

草野 耕一氏

くさの・こういち 東京大法卒。80年弁護士。慶応大大学院教授を経て、19年最高裁判事。66歳。

▼関与した裁判 夫婦同姓の規定を巡る大法廷決定で「違憲」の反対意見(21年6月)

▼回答

①法令の解釈が異なれば人々の行動が変わり、人々の行動が変われば社会のありようも変わる。豊かで公正で寛容な社会の形成に資する判決・決定の作成に傾注したい。

②(仕事中の事故で被害者側に賠償した従業員が、勤務先に負担を求めることが可能とした)20年2月28日の判決だ。裁判長として関与した。「福利のパイを大きくする」ということの意義を補足意見で比較的明確に示し得た。

③人がすでに形成されている価値観の下でよいと考える生き方の追求を妨害しないという原則は、憲法の求める立法の基本理念だ。

④国際間の法律問題を日本の裁判所だけで解決するのは困難。インド太平洋地域で法の支配が行き届いた国々が協力し国際機関を設立することが必要だ。

渡辺 恵理子氏

わたなべ・えりこ 東北大法卒。88年弁護士。NHK経営委員会委員を経て、21年最高裁判事。62歳。

▼関与した裁判 (就任後間もないため特になし)

▼回答

①それぞれの主張とよって立つところを丁寧に検討し、判断の意味するところを大局的に考えながら、公平かつ妥当な事案の解決とあるべき法の解釈に向け努力していきたい。

②弁護士として担当した国際カルテル事件。日本の会社や個人が、海外で法制などの違いから厳しい制裁、特に個人にとっては一生を左右する刑事罰に直面し、少しでも前向きに解決できるよう懸命に事件処理にあたった。

③司法に属する者として、個人的な意見を述べることは差し控えたいが、子の福祉なども十分に配慮しながら、少数者の意見も尊重したい。

④国際的事件は国際的取引慣行などを考慮する必要がある。これらも踏まえて公平かつ妥当な判断を行うことが必要だ。

安浪 亮介氏

やすなみ・りょうすけ 東京大法卒。83年判事補。大阪高裁長官を経て、21年最高裁判事。64歳。

▼関与した裁判 (就任後間もないため特になし)

▼回答

①最終審である最高裁の判断の重さを常に自覚した上で、一つ一つの事件について、中立公正な立場から誠実かつ謙虚に取り組むことが重要だ。

②下級審で民事裁判を担当していた当時、3人の裁判官で合議を尽くし、考えに考え抜くことが大切だと思っていた。

③社会の変化が激しく、価値観の多様化が著しい今日にあって、判断の難しい事件が増えている。幅広い視野と柔軟な発想をもって、バランスがとれたよりよい判断ができるように努力していきたい。

④外国の法制度や国際的取引の慣行などの正確な理解を審理に取り入れていくことが必要だ。一つの方策として、これらに通じた裁判官の育成も必要だと考えている。

長嶺 安政氏

ながみね・やすまさ 東京大教養卒。77年外務省入省。英国大使を経て、21年最高裁判事。67歳。

▼関与した裁判 夫婦同姓の規定を巡る大法廷決定で「規定が合理性を欠き、国会の立法裁量の範囲を超えるものと断じることは困難だ」とする補足意見(21年6月)

▼回答

①国際的な視野も含めて多角的な観点から事件の核心に迫り、法の支配の深化に寄与することを目指したい。

②まだ担当した裁判例が少ないこともあり、特定の裁判を取り上げることは控えるが、自分らしさを生かしながら事件に向き合っていきたい。

③社会の様相が変化し、価値観の多様化が見られることをよく認識する必要がある。個別の事件の解決の中で答えを見いだしていくことになる。

④扱う問題によっては、国際公法、国際私法、外国法の知見が求められ、外国裁判所との協力が必要になることもある。グローバル化に対応した研修なども充実させていく必要がある。

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