内密出産2例目を公表 熊本市の慈恵病院

病院以外に身元を明かさず出産する「内密出産制度」を導入している熊本市の慈恵病院は11日、制度を利用した熊本県外の成人女性が4月に出産したと記者会見で明らかにした。昨年末に続き2例目。
病院によると、女性は昨年「妊娠したが、誰にも頼れない」と病院に相談。「自分の手で命を捨てたくない」と悩んだ様子だった。出産後に「病院がなかったら赤ちゃんを産まずに一緒に死んでいたと思う」と話したという。
女性は出産後、子の出自証明となる自身の健康保険証などのコピーを職員に預けた。特別養子縁組で他の人に子を託したい意向もあるが、自分で育てたい気持ちもあり、病院は確認を続ける。
蓮田健院長は内密出産の法的な裏付けがない中での実施を「とても重い」とする一方「赤ちゃんの殺人・遺棄を防ぐことができた」と意義を強調。他にも制度利用を希望する相談が2~3件寄せられている。
孤立出産を防ぐため、病院は2019年に独自に制度を導入。今年1月、初めて10代女性が21年12月に出産したと発表した。
生まれた子どもの戸籍を巡っては、熊本地方法務局が今年2月、病院の質問状に対し、出生届を提出しなくても、市区町村長の職権で戸籍の記載ができると回答した。市は子どもの養育や身元情報の管理などに関し病院と協議を始めた他、国に法整備を求めている。
熊本市の大西一史市長は11日「今もなお切迫した状況にある女性がおり、国によるガイドラインの早急な策定が望まれる」とのコメントを発表した。〔共同〕