五輪汚職、元ADKHD社長が贈賄罪認める 地裁初公判

東京五輪・パラリンピックを巡る汚職事件で、大会組織委員会の高橋治之元理事(78)=受託収賄罪で起訴=に賄賂を提供したとして、贈賄罪に問われた広告大手のADKホールディングス(HD)元社長、植野伸一被告(69)の初公判が17日、東京地裁で開かれた。植野元社長は「間違いありません」と起訴内容を認めた。
一連の汚職事件では、高橋元理事がADKHDなど5ルートから総額約1億9800万円を受け取ったとされる。ADKHDは紳士服大手のAOKIHDに続き、東京地裁で始まった2ルート目の公判となる。植野元社長は捜査段階では不正を否定していたが、その後に起訴内容を認める方針に転じた。
検察側は冒頭陳述で、ADKHD側が大会のスポンサー契約に関与できるよう高橋元理事への働きかけを繰り返し、植野元社長が報告を受けていたと説明。元社長自らも元理事と会食し「スポンサー集めに苦労している。どうか助けてください」などと懇願したと指摘した。
起訴状によると、植野元社長は部下らと共謀し、大会スポンサーの代理店業務に関われる「販売協力代理店」への選任を後押ししてもらう見返りなどとして2019年11月〜22年1月、高橋元理事側に計約1400万円を提供したとされる。公訴時効(3年)が成立した分も含めると、賄賂は総額で約4700万円に上るとされる。
ADKHDでは、植野元社長とともに贈賄罪に問われた元事業統括部長の久松茂治被告(63)、元部長補佐の多田俊明被告(60)の初公判が3月に予定されている。

AOKIHD元会長の青木拡憲被告(84)ら3人の公判が既に結審し、4月21日に判決期日が指定された。残る3ルートは、大会スポンサーで出版大手のKADOKAWA、広告会社の大広、玩具会社のサン・アロー(東京・千代田)。
高橋元理事は「賄賂を受領したことはない」と不正を全面的に否認しており、現時点で初公判の見通しは立っていない。
ADKHDを巡っては、東京大会を巡る入札談合事件にも関与したとされる。東京地検特捜部は組織委元次長の森泰夫容疑者(55)や広告最大手の電通元幹部ら計4人を、独占禁止法違反(不当な取引制限)容疑で逮捕した。ADKHDは課徴金減免(リーニエンシー)制度に基づき、公正取引委員会に違反を自主申告したため、刑事告発を免れる見通しだ。
関連企業・業界