懲役・禁錮は「拘禁刑」 刑罰一本化、改正刑法近く成立

刑罰の懲役と禁錮を廃止し、「拘禁刑」に一本化する刑法などの改正案が10日、参院法務委員会で採決され、賛成多数で可決された。来週の本会議で可決・成立する見通し。懲役受刑者に科されていた刑務作業が義務でなくなり、改善更生に向けた指導や教育に多くの時間を充てることが可能になる。「応報」とされていた刑罰の概念を変え、再犯防止の理念を矯正の現場に反映させるのが狙い。
施行は公布から3年以内。刑罰の種類変更は、1907(明治40)年の刑法制定以降初めてだ。
現行法の刑罰は死刑、懲役、禁錮、罰金などがあり、懲役は木工や洋裁などの刑務作業を義務とする。現在でも、薬物依存や性犯罪の懲役受刑者の一部は改善プログラムなどを受けているが、刑の一本化により、作業義務に縛られずに指導できるようになる。
近年増えている高齢受刑者のリハビリや福祉的支援、若年受刑者の学力を向上させる指導にも力を入れ、社会復帰を後押しする。
受刑者に被害者の心情を伝えて理解を促し、処遇内容に生かす制度も創設する。
この他、保護観察付き執行猶予の期間中の犯罪に再度執行を猶予できない規定を改め、保護観察制度の積極活用を図る。刑務所などを出ても身寄りがない人に寝食を提供する「更生緊急保護」の期間を最長1年から2年に延長する。
犯罪白書によると、近年刑法犯の人数自体は減る一方、再犯者の占める割合は増加傾向で、2020年に49.1%を占めた。出所後に再び犯罪に手を染めないようにする取り組みが課題になってきた。
インターネット上の誹謗中傷対策で「侮辱罪」を厳罰化する改正案も10日、参院法務委で可決され、今国会で併せて成立する見通し。〔共同〕
▼刑罰 現行刑法は、罪を犯した者に言い渡せる刑(主刑)として、死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留、科料を定める。主刑に付加して科せる刑(付加刑)の没収もある。懲役・禁錮の実刑判決を受けたり、有罪判決の執行猶予が取り消されたりした場合、刑務所や少年刑務所で刑に服する。有期の場合、刑期の上限は20年で、複数の罪を併合する場合などは30年になる。〔共同〕