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東電旧経営陣に再び無罪 福島第1原発事故で強制起訴

(更新)

2011年の福島第1原子力発電所事故を巡り、業務上過失致死傷罪で強制起訴された東京電力の旧経営陣3人の控訴審判決で、東京高裁(細田啓介裁判長)は18日、一審東京地裁判決に続いて3人に無罪を言い渡した。原発への10メートルを超える津波は予見できなかったとの一審判断は妥当と認定した。原発事故で東電旧経営陣の刑事責任は再び問われず、責任を認めた民事と判断が割れたことになる。

原発事故を巡る責任追及は3ルートある。住民訴訟と株主代表訴訟の民事2ルートでは法人としての東電と旧経営陣の賠償責任が認められた。これに対し、国の責任は認めない司法判断が最高裁で確定している。

今回の強制起訴事件は刑事裁判だ。事故における個人の刑事責任を問う刑法の業務上過失致死傷罪が適用され、国は被告となっていない。無罪判決は旧経営陣の過失を問うハードルの高さを改めて示したといえる。

今後の注目点は検察官役の指定弁護士が上告するかどうかになる。上告すれば最高裁で争われる。株主代表訴訟の審理は東京高裁に移った。事故発生から間もなく12年となるなか、旧経営陣の責任を巡る最終結論が出るのはなお先になる。

3人は勝俣恒久元会長(82)、武黒一郎元副社長(76)、武藤栄元副社長(72)。告訴・告発を受け、東京地検が不起訴処分としたが、16年に検察審査会の議決に基づき強制起訴された。

公判での主な争点は津波発生を予測できたかの「予見可能性」と、防止策を講じることができたかという「結果回避可能性」の2点だった。

判決は政府機関の地震予測について「津波の襲来の現実的可能性を認識させる情報ではなかった」と指摘した。旧経営陣には原発を停止させるほどの義務はなく、ほかの津波対策を講じたとしても事故を回避できたとは認められないと結論づけた。

原発事故時の賠償責任は、過失の有無にかかわらず事業者が負うと原子力損害賠償法で定められている。事業者の支払い能力を超えた場合に「国が必要な援助を行う」とし、国の責任は曖昧だ。原発を「国策民営」で進めるうえでは、責任の明確化に向けた議論が求められる。

09年導入の強制起訴制度では無罪判決が相次いでいる。今回の判決でも検察が不起訴とした事件で有罪を得る難しさが改めて浮き彫りになった。

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