教員免許更新制を廃止へ 教員の負担重く、文科省が検討
小中高校などの教員免許を10年ごとに更新し講習の受講を義務付ける制度について、文部科学省が廃止を検討していることが11日、分かった。講習時間の確保や費用が教員の負担となっているうえ、教員の能力向上への効果が低いと判断。中央教育審議会での議論を踏まえ、来年の通常国会での法改正を目指す。
萩生田光一文科相は3月、教員免許更新制の「抜本的な見直し」を中教審に諮問。制度のあり方について議論が進められてきたが、同省は今夏にも廃止案を示す見通しだ。
ただ中教審には制度を改善した上で存続させるべきだとの意見も根強く、同省は議論を見極めたうえで最終的な結論を出す。早ければ来年の通常国会に、教育職員免許法の改正法案を提出する。

免許更新制は、最新の知識や技術の習得による教員の能力の維持を目的に、2009年度に導入された。免許の有効期間を10年とし、期限前の2年のうちに大学などで教科指導や生徒指導などに関する30時間以上の講習を受けることを義務付ける。
このため受講には、学校での授業がない夏休みなどを割いて、まとまった時間を確保する必要がある。約3万円の受講料は自己負担で、学校現場からは不満が出ていた。
文科省が5日に公表した調査では、講習時間や受講料に負担を感じると回答した教員は、いずれも8割を超えた。多忙な教員の働き方改革に逆行し、一層の教員不足につながるとの懸念もある。
講習内容も課題だ。最新の知識や技術を習得できる受講内容だったか聞くと、44.8%が否定的な回答だった。「教育現場で役に立っていない」と答えた教員は37.8%で、「役に立っている」(33.4%)を上回った。
こうした問題も背景に、中教審は今後の議論で、免許更新制に代わる教員の能力向上策として、各教育委員会が独自に実施している研修の充実を検討する。講習を受講するために外部に出向かなくても、学校で受けられるオンライン講座を拡充するなどの具体的な対応策を想定している。