税理士50人超、国税調査中に自主廃業 懲戒逃れ目的か

脱税などの不正に関わった疑いで国税当局から調査を受けている間に自主廃業した税理士が、過去約10年間で50人を超えることが8日、関係者の話でわかった。懲戒処分を免れる目的も少なくないとみられ、国税庁は制度の見直しを財務省に求めている。
国税庁は税理士への指導監督のため、税理士の違反行為を調査し、悪質な不正行為が認められた場合は懲戒処分を科す。税理士法は懲戒処分について①戒告②2年以内の税理士業務の停止③税理士業務の禁止――の3種類を規定。処分を受けると、国税庁のホームページで氏名や事務所の住所、不正内容が公表される。
国税庁によると、書面のやりとりなどの簡易な調査を含めると、税理士の違反行為などの調査件数は年間約2000~3000件。そのうち30~50件ほどで悪質な不正行為を認定し、懲戒処分に至っている。
ただ、税理士法に基づく調査は現役の税理士が対象で、調査中に自主的に廃業した税理士は調査が中断され、処分されなくなる。一度廃業しても、税理士会に認められれば復帰することが可能。国税当局は守秘義務があり、調査内容を税理士会に伝えることができない。
関係者によると、調査中に自主廃業し、処分されないまま税理士会に再登録し、業務を再開している税理士がいるという。自主廃業は病気などの理由も含まれるが、処分や氏名の公表を避けるために廃業するケースも少なくないとみられる。
国税庁の調査は税理士の復帰後に再開することもあるが、時間が経過すると証拠収集などが困難になる。こうした「懲戒逃れ」を防ぐため、国税庁は税理士法の見直しを所管する財務省に求め、改正内容を議論中という。廃業後も調査や処分を可能にするなどの変更が今後の税制改正で検討される可能性がある。