戦前には現職首相暗殺、首脳狙うテロ海外でも

国内では過去にも現役首相ら大物政治家らが襲撃され命を落とす事件が起きている。
戦前では1921年、「平民宰相」と呼ばれ初の本格的政党内閣を結成した原敬首相が東京駅で刃物で刺され、死亡した。
30年には浜口雄幸首相が東京駅で狙撃された。浜口首相が敢行したロンドン海軍軍縮条約調印などに反発する右翼青年に銃撃され、翌年死亡した。
32年には犬養毅首相が海軍青年将校に射殺された「五・一五事件」が起きた。36年の「二・二六事件」では、陸軍青年将校らが首相官邸などを襲撃し、斎藤実内大臣、高橋是清蔵相らを殺害。一連の事件で軍国主義が強まり、日本は戦争への道を突き進んでいった。
戦後は60年に浅沼稲次郎社会党委員長が日比谷公会堂(東京・千代田)で演説中に右翼少年に胸を刺され、死亡した。同年、安倍晋三元首相の祖父、岸信介首相も首相官邸のレセプション会場でももをナイフで刺され重傷を負った。
1990年に本島等長崎市長が市役所前で右翼の男に銃撃され重傷を負った。92年には金丸信・自民党副総裁が講演会で銃撃され、細川護熙前首相(当時)も94年に東京都新宿区のホテルで男に銃撃されたが、いずれも無事だった。
2002年10月には石井紘基衆院議員が都内の自宅前で右翼団体代表の男に刺殺された。07年4月には伊藤一長・長崎市長が市長選のさなか、JR長崎駅前で暴力団の男に狙撃され、翌日死亡した。

世界でも政治家を標的としたテロや暗殺が繰り返されてきた。第2次世界大戦以降、少なくとも20人程度の首脳や首脳経験者が過激派や敵対勢力などによって暗殺されている。
米国では1963年にケネディ大統領が遊説先のテキサス州ダラスでパレード中に狙撃され死亡した。68年には、弟のロバート・ケネディ上院議員も大統領予備選の遊説中に銃弾に倒れた。
81年にはレーガン大統領がワシントン市内で演説後、ホテルの車寄せで銃撃される暗殺未遂事件が起きた。胸部に銃弾が命中し緊急の摘出手術を受け、一命を取り留めた。
インドでは親子2代続けて暗殺事件に倒れた。インドで初代首相ネールの長女インディラ・ガンジー首相が84年に警護隊員によって射殺された。インディラ・ガンジーの長男のラジブ・ガンジー元首相も91年、遊説中に爆弾テロで死亡した。
英国では2021年に、与党・保守党の下院議員が選挙区内の教会で刺殺された。16年には、労働党の下院議員が欧州連合(EU)離脱を問う国民投票のキャンペーン中に襲われて死亡する事件が起きた。
首脳暗殺事件がジェノサイド(民族大量虐殺)に発展した事例もある。1994年にルワンダのハビャリマナ大統領とブルンジのヌタリャミラ大統領を乗せた航空機が撃墜され、両首脳は死亡した。
撃墜をきっかけに政治的緊張が高まりルワンダ政府軍や同国の多数派を占めるフツ族の強硬派民兵組織が、少数派のツチ族ならびにフツ族の穏健派を虐殺するに至った。