名古屋ワイン今夏醸造へ 市内に畑「気軽に飲んで」

名古屋市中心部で、今夏にも「名古屋ワイン」の醸造を開始する計画が進んでいる。国の基準ではワインに地名を冠すには原料の収穫も製造もその土地で行う必要があり、市内にブドウ畑も確保した。醸造家は「気軽に飲めるワインをつくり、都市型ワイナリーという新たな文化を根付かせたい」と張り切っている。
下町情緒を残す同市西区の円頓寺商店街近く。以前はマージャン店だったという年季の入った3階建てビル1階60平方メートルほどの広さの部屋で、ステンレスタンクが近代的な輝きを放つ。愛知県常滑市の馬場憲之さんらが準備を進める「名古屋ワイナリー」だ。
もともと商店街関係者らが開設を目指していたが、新型コロナウイルス流行による本業の不振で計画は頓挫。常滑市で観光農園や農家レストラン、ワイナリーを経営する馬場さんが事情を知り、意思を継いだ。
馬場さんが醸造を始めたのは15年ほど前、米オレゴン州ポートランドを訪ねたのがきっかけ。現地では市街地に醸造所があり「街の人たちが集まって楽しそうに飲む景色が、幸福に見えた」。人口230万人を抱える名古屋市での計画は原体験により近いものになると感じた。

国税庁は表示基準で、地元産ブドウ85%以上を使い、その土地で醸造するとしている。最初は市内の農家から仕入れる方針だが、馬場さんは既に同市緑区に約2千平方メートルの畑を確保、高温多湿な名古屋と比較的気候が似たスペインで栽培が盛んな品種「アルバリーニョ」の苗木100本を植えた。ブドウが収穫できる25年夏以降は、この畑から調達する。
ワイナリーのあるビル2階のレストランで提供する予定で、目指すのは「ワイン通に受けるものではなく、気負わず楽しめる酒」と馬場さん。「都会は革新的で新しいことに挑戦する人たちの集まりだ。醸造所としてもいろいろな試行錯誤をしていきたい」と話した。〔共同〕