東電旧経営陣4人、原発事故で13兆円賠償命令 最高額か
株主代表訴訟で東京地裁判決
東京電力福島第1原子力発電所事故を巡り、同社の株主らが旧経営陣5人に計22兆円を東電に支払うよう求めた株主代表訴訟の判決で、東京地裁は13日、旧経営陣4人に計13兆3210億円の支払いを命じた。朝倉佳秀裁判長は津波対策を怠ったと判断した。原発事故を巡る旧経営陣の責任を認めた判決は初めてで、国内の裁判の賠償額としては過去最高とみられる。
事故の避難者らによる集団訴訟で最高裁は、法人としての東電は賠償責任を認め、国の責任は否定する判決を出している。今回は原発事業者の経営責任を重く捉えた司法判断といえる一方、旧経営陣が全額支払うのは困難と見込まれる。
4人は勝俣恒久元会長(82)、清水正孝元社長(78)、武黒一郎元副社長(76)、武藤栄元副社長(72)。賠償額は①廃炉にかかる約1兆6150億円②被災者への損害賠償費用の7兆834億円③除染などの対策費用の4兆6226億円――の3つを合計して算定した。

提訴は事故翌年の2012年3月。争点は政府機関が02年に公表した地震予測「長期評価」に基づき巨大津波の予見が可能だったかや、浸水対策などで事故を防げたかどうかだった。
判決は長期評価について「科学的信頼性を有する知見」と認めた上で旧経営陣の当時の対応を検討した。東電は08年、長期評価に基づき福島第1原発に最大15.7メートルの津波が到達すると試算しており、「最低限の津波対策を速やかに指示すべき取締役としての注意義務を怠った」と指摘した。
さらに、主要な建屋などで浸水対策を実施していれば「重大事態に至ることを避けられた可能性は十分にあった」と結論づけた。

5人のうち、10年6月に常務に就任した小森明生氏(69)は「対策を講ずることができたとはいえない」と賠償責任は認めなかった。
東電は判決後、「個別の訴訟に関することの回答は差し控える」とのコメントを出した。
刑事裁判では、勝俣氏ら3人が業務上過失致死傷罪で強制起訴された。一審は無罪で、刑事と民事で判断が分かれた。23年1月に控訴審判決が予定されている。
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