口内粘膜でシート、角膜に 今夏以降に移植実施へ

京都府立医大の外園千恵教授(眼科学)らのチームは、角膜の表面にある「角膜上皮」がけがなどで作れなくなった「角膜上皮幹細胞疲弊症」の患者に、患者本人の口内の粘膜細胞を培養して作ったシートを角膜の代わりに移植する治療法を6日までに開発した。視力回復が期待できるといい、京都府立医大と国立長寿医療研究センター(愛知県)で今夏以降、移植を実施する。
角膜の移植を待つ患者は国内でも多いが、この手法では他人から角膜の提供を受ける必要がなく、自らの組織を移植するため免疫による拒絶反応も起こらないといい、外園教授は「角膜治療の可能性が広がる」としている。
角膜上皮幹細胞疲弊症では、角膜上皮のもとになる細胞がダメージを受けることで角膜上皮の細胞が作られなくなり、重度の場合、黒目部分が保護されずにまぶたが癒着するなどし、視力が著しく低下。有効な治療法は見つかっていない。
口内の粘膜細胞は採取が容易で増殖しやすく、角膜も粘膜細胞の一種。患者の口内から採取した粘膜細胞を、健康な妊婦から提供を受けた羊膜にのせ、10~14日間培養。直径約2センチのシート状にする。
羊膜と一緒に移植することで目に定着しやすくなるのが特徴。羊膜は当初、半透明だが次第に透明になる。人工多能性幹細胞(iPS細胞)から角膜のシートを作製する研究も国内で進められているが、チームの手法ではより安価に移植が実施できる見通しという。
シートの製造は公益財団法人「神戸医療産業都市推進機構」、販売は青森県弘前市の医療ベンチャー「ひろさきLI」が担う。〔共同〕