教員免許更新制、23年度にも廃止 指導力の向上なお課題

文部科学省は23日の中央教育審議会の小委員会で、小中高校などの教員免許の期限を10年とし講習の受講を義務付ける「教員免許更新制」を廃止する審議まとめ案を示した。多忙化する教員の負担になる上、内容が実践的でないなどの指摘が相次いでいた。
同省は2022年の通常国会に同制度を廃止するための教育職員免許法改正案を提出する方針。最速で23年度に更新制は廃止される見通し。同省は自治体や大学などと連携し、教員が資質向上のために学び続けられる制度を検討する。
ICT(情報通信技術)の発達やアクティブラーニング(能動型学習)の導入、小学校英語の必修化などで、教員には多様な能力が求められるようになっている。新型コロナウイルス禍での遠隔授業への備えや、深刻化する不登校やいじめへの対応などもある。国や自治体による教員の学びを支援する仕組みが重要になる。
まとめ案は制度の現状について「更新しなければ職位を失う状況下で学びが形式的なものとなり、学習効果を低下させてしまいかねない。制度の発展的な解消を検討することが適当だ」とした。

萩生田光一文科相が3月、中教審に「抜本的な見直し」を諮問していた。萩生田氏は23日、「(制度がなくなっても)教員の研修の必要性は何ら変わらない。抜本的に見直し研修の充実を目指す」と話した。
同制度は第1次安倍晋三政権などで議論され、09年度に始まった。免許に10年の期限を設け、期限前の2年間に大学などで30時間以上の講習受講を更新の条件とした。
費用約3万円は自己負担で夏休みなどに受講する必要があり、不満の声が上がっていた。コロナ禍による教員の負担増も廃止を求める声に拍車をかけた。期限を忘れる「うっかり失効」で現職教員が教壇に立てなくなる事態も相次いでいた。
教員の指導力向上は各国も取り組んでいる。
文科省によると、米国では全ての州で教員免許の更新制が導入されている。州ごとに5年間などの有効期限を設定し、大学で数十時間の研修の受講を義務付ける。
フランスや英国、ドイツなどは更新制を設けない一方、国主導で研修を充実させている。フランスは約400種類のオンライン研修を受けられるウェブサイトを国が整備し、毎年25万人以上が受講。英国も教員がスキルアップに使える映像教材を政府が用意している。
中教審は更新制廃止後の教員研修のあり方を議論する。都道府県が実施する教員研修をオンライン化して受けやすくするなどの案が上がっている。現場の教員が抱える課題の参考になる実践的な内容を充実させられるかなど、課題は多い。