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富士山、地震増で入山規制も 警戒の判定基準を初公表

(更新)

気象庁は4日、富士山の噴火警戒レベルを上下させる際の判定基準を公表した。山体での地震増加など観測データに基づき噴火リスクを判断し、情報発信を早めて適切なタイミングで避難できるようにする。富士山を巡る判定基準の公表は初めて。最新のハザードマップでは噴火被害の拡大も見込まれ、自治体や住民は備えを急ぐ必要がある。

同庁は警戒レベルを火山の活動状況に応じ5段階で発表する。自治体などは段階ごとに警戒が必要なエリアを定めており、地域住民らはいざというときに安全な場所へ退避することが求められる。

富士山の場合、山体の浅い部分での火山性地震が1時間あたり10回前後に増えたり、山の傾斜に一定の変化が見られる地殻変動や噴気、陥没などが確認されたりした場合、火山活動が高まったと判断。レベル3(入山規制)とし、登山禁止などの措置を取る。

一方、火山活動が高まる過程ではレベル2(火口周辺規制)は飛び越して運用する。必ずしも今の山頂から噴火するとは限らず、火口が出現すると想定される区域が広いためだ。警戒レベルを引き下げる過程では活用する。

山体での地震がさらに2倍以上に増えたり、より顕著な地殻変動が起きたりした場合には、マグマが上昇してきた可能性があるとしてレベル4(避難準備)を発令。富士山がまたがる静岡県や山梨県の山麓の自治体では高齢者などの早期避難が求められる。

さらに体に感じる地震が頻発するなどした場合は、居住地域に大きな被害を及ぼす噴火の恐れがある。レベル5(避難)に引き上げ、溶岩流が早期に到達する危険なエリアに住む全住民は退避が必要になる。

国内には111の活火山があり、居住地域に近い山も多い。気象庁は中長期的な噴火の可能性などを考慮し、49の活火山について警戒レベルの判定基準づくりを進めている。このうち浅間山や御嶽山など46カ所については基準を策定した。

気象庁による判定基準の公表は、2014年に63人の死者・行方不明者を出した御嶽山の噴火災害をきっかけに始まった。行楽シーズンに登山者らが犠牲になったことから、専門家らでつくる火山噴火予知連絡会は警戒レベルを出す基準を精査して公表し、わかりやすい情報発信に努めるよう求めた。

これまでも同庁内には、富士山について一定の判断基準はあった。今回、他の火山で得られた研究成果も生かし、具体的な観測データの目安を盛り込んで公表した。富士山は気象庁、防災科学技術研究所、東京大などが観測を続けており、各機関はデータを共有して異変の察知に取り組む。

いまの技術でも火山活動がどう推移するかを正確に予測するのは難しい。レベルを引き上げる前に小規模な噴火が起きる可能性もあり、同庁は「観測データを積み重ね、新たな知見を踏まえて今後も判定基準を見直していく」という。

防災計画見直し急ぐ 周辺自治体、ハザードマップ改定で

富士山は静穏な状態にあり、警戒レベルは最も低い1。ただ、江戸時代の宝永大噴火(1707年)の直前に大地震が起きたこともあり、東日本大震災後、火山活動の活発化を懸念する声は少なくない。当時は大量の噴石や江戸への降灰があったとされ、噴火が発生すれば人的・経済的な被害は甚大となる恐れがある。

静岡、山梨、神奈川の3県などでつくる「富士山火山防災対策協議会」は3月、新たなハザードマップを公表した。大規模噴火が起きた場合の溶岩噴出量を従来の約2倍に見直した結果、溶岩流が到達する可能性がある自治体は15から27の市町村に拡大した。神奈川県の相模原市や小田原市、静岡県の沼津市などが加わり、防災対策の見直しを迫られる。

富士山の麓にある静岡県富士宮市は協議会の広域避難計画を踏まえ、避難の対象エリアやタイミングを見直す予定だ。現在は警戒レベル3で登山者の避難と入山規制を呼びかけるが、「必ずしもレベルの順に噴火に至るとは限らない。気象庁や地域住民の情報なども踏まえ、状況に応じて避難情報を出せるようにしたい」と話す。

新たに溶岩流到達の可能性地域に指定された静岡市は2022年1月に防災計画を見直す予定だ。危機管理部門の担当者は「従来は降灰に注意する程度だったため、まだ知識が少ない。県の広域避難計画や他の自治体も参考にして決めたい」と話す。

噴火によるインフラへの影響は大きい。溶岩流は東海道新幹線に最短で5時間、新東名高速道路に1時間45分、東名高速道路に2時間15分で到達する可能性がある。国が20年にまとめた火山灰の被害想定では、東京など首都圏でも広範囲に降灰すると指摘された。最悪の場合は鉄道や車が使えず、停電や断水も起きるとされる。

JR東海は警戒レベルに即した対応は現時点で考えていないが、「気象庁からの情報も踏まえて新幹線などの列車や乗客、社員らをすみやかに避難させる」としている。(堀越正喜、下川真理恵)

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