「ルフィ」グループ2人、7日に日本移送 残る2人も調整

「ルフィ」を名乗る指示役が関与したとされる広域強盗事件に絡み、日本がフィリピン側に強制送還を求めている4人の容疑者のうち、少なくとも2人が7日にも移送されることが固まった。4人が属するグループによる特殊詐欺被害は60億円に上り、関東地方などで連続発生した強盗や窃盗事件にも関与した可能性がある。身柄の移送がグループの全容解明につながるかが焦点となる。
捜査関係者によると、7日にも移送される2人はフィリピンの入国管理施設で拘束中の今村磨人容疑者(38)、藤田聖也容疑者(38)。警視庁は6日に捜査員15人程度をフィリピンに派遣する方針だ。
残る渡辺優樹容疑者(38)と小島智信容疑者(45)の2人についても、早期の移送へ向けて調整を続けている。2人はフィリピンで刑事裁判が進行中で、6日に予定される審理で棄却されれば移送が可能となる見通しだ。4人同時に移送される可能性もある。今村、藤田両容疑者はすでに送還できる状態にある。
4人はいずれも2019年に東京都内で起きた特殊詐欺事件に絡み窃盗容疑で逮捕状が出ている。警察当局は4人の中に「ルフィ」が含まれるとみている。フィリピンを拠点とした特殊詐欺グループの幹部らで、渡辺容疑者がリーダー格とみられている。
警視庁は身柄の引き渡し後に逮捕し、まず特殊詐欺事件に関して取り調べる。その後に各地で相次いだ強盗事件への関与の有無を捜査する。
警察庁によると、手口などから関連性が疑われる強盗や窃盗事件は22年以降、関東地方や西日本の少なくとも14都府県で20件発生。今年1月19日には東京都狛江市の民家で住人の女性(90)が遺体で見つかる強盗殺人事件が起きた。
複数の事件で「ルフィ」や「キム」を名乗る人物が匿名性の高い通信アプリなどで日本の実行役に指示を出し、一部の事件ではフィリピンの国番号を示す「63」の電話が使われていた。複数人がルフィなどと名乗って指示を出していた可能性もある。
本格協議から1週間 大統領訪日控え異例のスピード
日本国内での犯罪が疑われる容疑者の引き渡しを他国に要請する場合、一般的には相手国の主権を尊重し、犯罪事実などの情報を共有したうえで協力を求める。警察関係者によると、容疑者の身柄移送の調整には数週間以上かかる場合が多い。現地当局との協議に加え、派遣する捜査員のビザ取得、航空会社との調整などが必要なためだ。
17年に積水ハウスが「地面師」グループに土地購入費をだまし取られた詐欺事件では、主導役とされた男が強制捜査の直前にフィリピンに渡り、18年12月に同国の入国管理当局に拘束された。その後に国外退去処分を受けたが、日本に移送が完了するまでに約3週間かかった。
今回はフィリピン政府との本格協議開始から約1週間。異例の速さで調整が進んだ背景に外交日程がある。フィリピンのレムリヤ法相は8日のマルコス大統領訪日までに強制送還を実現したい考えを示してきた。
日本側は4人の一斉送還を求めてきた。役割が細分化された組織犯罪では容疑者の身柄確保を可能な限り同時に実行する。身柄を拘束できていないメンバーが多いほど証拠隠滅や口裏合わせが起こりかねないためだ。強盗への関与のほか、組織に上位者がいないのかなど犯罪グループの全容解明には4人への捜査が重要になる。
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