「孤立させない居場所を」 生きづらさ、悩み相談支援

2021年版自殺対策白書によると、20年は働く女性や女子生徒たちの自殺が増えていた。新型コロナウイルス禍の中、生きづらさを抱え死を選びかねない人の心をどうしたら温められるか。悩み相談に向き合う支援団体は「孤立、孤独に陥らせない居場所づくりが喫緊に必要だ」と訴える。
「母親が病院で働いているため友人から『感染するから近寄らないで』と言われた。つらいし悲しい」「リストカットを親に見つかり叱られた」。NPO法人「チャイルドライン支援センター」が運営する相談窓口には昨年、中高生を中心に切実な悩みが続々と寄せられた。
「泣きながら電話をかけてくる女子がたくさんいた」と代表理事の小林純子さん。心の不調を訴える人が例年になく多かったとして「親もコロナ禍で失業するなどし、子どもの気持ちを受け止める余裕がなかったのだろう」と分析する。
厚生労働省によると、児童生徒の自殺者は昨年6、8、11月の増加が目立った。学校の部活動の大会時期がコロナ禍で中止となった時期に重なることなどから、小林さんは「学校生活の主要なイベントがなくなるのは子どもにとってはかなり深刻だった」と指摘した。
生活困窮者を支援する「反貧困ネットワーク」でも昨年、働く女性から「所持金がほぼない。この電話がつながらなければ死のうと思った」といった相談や、職場でのセクハラ、パワハラ被害の訴えが多かったという。
理事の白石孝さんは「本当に自殺する人は『死にたい』とすら声を上げられない。困窮者対策も全国の支援機関が連携し、包括的に、心の窓を開けられるような居場所づくりをすべきだ」と話す。
「経済危機の際に中年男性の自殺が増えたことはあったが、女性のみの増加は異例だ」。自殺問題に詳しい早稲田大の上田路子准教授(公共政策)は、考えられる背景を「コロナ禍で打撃を受けた飲食店、観光業に従事する人に女性が多かったことに加え、休校で母親の負担が増えた可能性もある」と指摘する。
若い人や自宅で問題を抱える人は電話をかけづらいこともあり得るとし、「国には、インターネットのチャット形式や、深夜から早朝の時間帯での相談対応、相談の混雑解消を図ってほしい」と体制整備を求めた。〔共同〕
・日本いのちの電話連盟
電話0570・783・556(午前10時~午後10時)
https://www.inochinodenwa.org/
・厚生労働省「こころの健康相談統一ダイヤル」やSNS相談
電話0570・064・556(対応時間は自治体により異なる)
https://www.mhlw.go.jp/mamorouyokokoro/
・東京自殺防止センター(NPO法人国際ビフレンダーズ)
電話03・5286・9090(午後8時~午前2時半)
https://www.befrienders-jpn.org/
・よりそいホットライン
電話0120・279・338(24時間対応。岩手、宮城、福島3県は末尾3桁が226)
https://www.since2011.net/yorisoi/