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東電旧経営陣、二審でも無罪主張 原発事故巡る強制起訴

(更新)

東京電力の福島第1原子力発電所事故を巡り、業務上過失致死傷罪で強制起訴され、一審で無罪となった旧経営陣3人の控訴審初公判が2日、東京高裁(細田啓介裁判長)であった。巨大津波の襲来を具体的に予見できたかどうかが最大の争点。検察官役の指定弁護士は「一審判決は誤り」と主張、弁護側は控訴棄却を求めた。

旧経営陣の3人は勝俣恒久元会長(81)のほか、原発担当の役員を務めた武黒一郎元副社長(75)、武藤栄元副社長(71)。いずれも無罪を主張している。勝俣元会長は体調不良で出廷しなかった。

告訴・告発を受けて捜査した東京地検は3人を不起訴処分としたが、検察審査会の議決に基づき強制起訴された。一審・東京地裁判決では無罪となったが、世界最悪レベルの原子力災害を巡る個人の刑事責任が改めて判断される。

刑事責任を判断する上で、政府機関が2002年に公表した地震予測「長期評価」の信頼性が鍵となる。三陸沖から房総沖でマグニチュード8.2級の地震が起きる可能性を示し、「最大15・7㍍」とする東電子会社の津波予測の前提となった。

19年9月の一審判決は信頼性などに「合理的な疑いが残る」と判断。「事故回避のため原発を止める義務を課すほどの予見可能性はなかった」と結論づけ、旧経営陣の刑事責任を否定した。

この日の控訴審初公判で指定弁護士側は「長期評価は唯一の公式的見解だった。十分な科学的根拠がある」と言及。原発の運転停止のほか、防潮堤の建設などの対策を講じる義務を負うと主張した。

旧経営陣は「津波による事故を予見できなかった」としている。弁護側は「(1896年の)明治三陸地震を超える巨大津波の対策は大がかりな工事が必要で、容易ではない」と強調した。

控訴審で指定弁護士側は、長期評価の策定に携わった元気象庁職員の証人尋問などを要望。裁判官の原発の現場検証も求めた。高裁は来年2月の次回期日で採否を決定する方針。

旧経営陣3人の起訴内容は、第1原発の敷地の高さ(10㍍)を超える津波が襲うと予見できたのに対策を怠り、運転を継続。11年3月11日の東日本大震災による津波で事故を招き、避難を強いられた入院患者ら44人を死亡させるなどしたとしている。

国の責任、割れる司法判断

原発事故を巡っては、国の法的責任も司法の場で問われてきた。法務省によると、避難住民らが起こした国家賠償請求訴訟は6月時点で約30件ある。これまでの高裁判決は4件で、3件が国の責任を認め、1件が否定した。地裁段階でも評価が分かれており、最高裁は今後、統一判断を示すとみられる。

原告数は約1万2千人、請求総額は約1100億円に上る。国の責任を巡っては、主に規制権限の行使を怠ったかどうかが焦点。判断の前提として、刑事裁判と同じく政府の「長期評価」に基づく巨大津波の予見可能性が争われている。

勝俣恒久元会長(81)ら旧経営陣に対しては、株主代表訴訟が起こされている。対策の不備が事故を招き、巨額の損失が生じたとして、旧経営陣が総額22兆円を東電に賠償するよう求める訴えで、月内に結審する見込み。

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