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本屋大賞「同志少女よ、敵を撃て」作者が語る戦争の無情 

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全国の書店員が最も売りたい本を選ぶ「2022年本屋大賞」が6日発表され、逢坂冬馬(あいさか・とうま、36)の「同志少女よ、敵を撃て」(早川書房)が大賞に選ばれた。第2次世界大戦の独ソ戦を舞台に、ソ連の女性狙撃兵の視点から戦争を描いた大作だ。昨年11月の刊行時から反響を呼び直木賞候補にもなった小説は、ロシアによるウクライナ侵攻が続くなか、いっそう現実世界とつながる力を持つ。著者の逢坂に聞いた。

「現代の戦争を参照するに足る作品にしなければ、という気持ちはもちろんあった。だが、まさか2022年にもなって、ロシアがウクライナに全面戦争を仕掛けるとは思っていなかった」。この状況下での受賞を単純に喜ぶことはできないという。「小説を読んでウクライナ情勢に対して何かを考えてもらえるなら、戦争が人間の内面をたやすく変えてしまうことや、立場を超えて繰り返される侵略と被害の無情さを感じてほしい」

第2次大戦中のソ連では、多くの女性兵士が戦闘に参加した。主人公のセラフィマは故郷をドイツ軍に襲われて母を亡くし、女性狙撃兵の訓練学校に入る。生徒たちそれぞれが持つ背景には、この地域の複雑さが投影されている。「ソ連は様々な民族と国を内包し『平等ではない関係の中で共存する世界』だった。現在のロシアの領域外から来る人物の登場は絶対に必要だと考えた」。カザフ人の猟師・アヤ、そしてウクライナ出身のコサック・オリガ。小説は主人公だけでなく、彼女たちが何を求めて戦っていたのかを考えさせる。

エピローグで描くのは終戦から三十数年がたった1978年だ。戦後、ソ連は最激戦地であったベラルーシとウクライナを優遇し、54年にはロシアからウクライナへクリミア半島が割譲された。そんな経緯に思いをはせつつセラフィマは「ロシア、ウクライナの友情は永遠に続くのだろうか」と自らに問う。

2014年のロシアによるクリミア併合以降を知る読者は「そうではなかった」という反語をここに読み取らざるを得ない。「崩壊していくさまを読み取り、現代へ連綿と続く戦争という問題を想起してもらえたら」というのが作家の狙いだ。

主人公はなおも自問する。変遷する権力のなかでソ連国民が唯一共有するのは、ナチ・ドイツを粉砕した「大祖国戦争」の記憶だ。「『大祖国戦争』の物語を美しく受け継ごうとするこの国には、それ以外の面を見ようとする日は、決して生まれ得ないのだろうか」。この一文が、いま痛烈に響く。

「国民のための物語として継承された戦争の記憶は、今後の戦争の礎にはなっても、相互理解には結びつかない」と逢坂は強く批判する。ではわれわれは、どんなスタンスで歴史と向き合えばよいのだろうか。

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