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シングル世帯が増加 専門家が説く「必要な覚悟」

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政府が2021年11月末に公表した20年の国勢調査の結果では、単身(シングル)世帯の割合が38.1%となり、05年比で8.6ポイント上昇した。高齢化が進むなか配偶者の死別や離婚が理由で単身となる人は多く、さらに若いうちからシングルで生きる「おひとり様」人生を選ぶ人も増えている。「結婚はいうまでもなく個人の自由だが、シングルを選択する場合には、少子化によって起きる事態への覚悟が必要」というのがニッセイ基礎研究所の人口動態シニアリサーチャー、天野馨南子さんの考えだ。将来的に、個人や社会はどんな備えが必要になるのか。

――日本では高齢化と未婚化が同時に進み、シングル世帯が急増しています。

「20年の国勢調査では、50歳までに一度も結婚しない人の割合を示す『50歳未婚率』が男性で25.8%、女性で16.4%となり、過去最高を記録した(配偶関係不詳を除く)。今回の調査から50歳未婚率の集計方法が一部見直されたことを踏まえ、比較可能なデータでみると微増にとどまったが、上昇傾向は続いていた」

「国立社会保障・人口問題研究所による18歳以上34歳未満の独身者を対象にした大規模調査(独身者調査)では、最新の15年の時点で『いずれは結婚しよう』と考える未婚者の割合は、男性が85.7%、女性が89.3%だった。過去20年間にわたり大きく変わっておらず、非常に高い水準にある。統計から言えるのは、結婚を希望する傾向は変わっていないが、それがかなわない社会となったということだ」

「近く公表される20年の独身者調査でもこの傾向は変わらないだろう。中高年の独身者と話すとまずは『結婚したくない』とは言うものの、その理由を詳しく聞くと『いい人がいないから』『お金が足りないから』といった諦念が根底にあることがほとんどだ。希望があっても出会いの場に足を運んでいないなど、言動が一致していない人が多いのも未婚者の特徴だ」

――結果的に独身で生きる人が増えるなか、本人や社会が備えておくべきことはあるでしょうか。

「日本は先進国でも最速の少子化によって将来の納税者が激減している。その社会で長生きすることのリスクを認識してほしい。特に女性は男性より長生きする可能性が高く、高齢女性の貧困問題が既に顕在化してきている。20代から40代の未婚者の6~7割が親族と同居しているが、50歳前後になると両親が亡くなったり、施設入居や介護が必要となったりする。そこでようやく孤独を感じるようになるのか、明治安田総合研究所の2017年の調査では、一度は独身を決意した男女が『45歳以上でやはり結婚したいと思うようになった理由』として『老後1人で生活することへの不安』をあげる人が男性で約4割、女性で約5割にも達した」

「40歳を過ぎてから結婚相手を見つけることは難しく、男性であっても初婚同士の婚姻で40歳以上の割合は1割に満たない。まずは、ひとりで生きる長い老後生活のための備えをしておかなくてはならない。19年に金融庁の試算で話題になった『老後2000万円問題』は、夫婦のモデルだ。一人暮らしの場合はスケールメリットが働かないので、老後の備えはそれ以上に必要だろう」

「日本は婚姻数と出生数の相関が非常に高い。出生率が下がっているというが、初婚同士の夫婦が持つ子供の数は今でも1.92人程度で過去30年以上大きく変わっていない。今の日本社会では、既婚者の持つ子供の数ではなく、結婚をしない人の増加が少子化に直結しているといえる」

「老後が将来世代の納税によって支えられている日本の社会保障制度という枠組みの中では、子供を持つ可能性が極めて低い独身者は、子供を持つライフコースの人々の子孫に老後を支えてもらわなくてはならない。そもそも日本は世界でトップレベルの治安と公共インフラを持つ平和な国だからこそ、一人でも暮らせる。しかしこの治安・インフラの根源は、税金であり、その税金を支払う人口(国民の総数)だ」

「一人で生きたいという思いや、最終的な選択を否定するつもりは全くない。しかし、この平和で安心安全な今の日本を維持していくには、自らの世代の老後を支えられる程度の次世代の人口、すなわち税収が必要だということは強調しておきたい」

――世界では独身者に税金をかける通称「独身税」で早期の結婚を促し、未婚・晩婚化を防ごうという急進的な議論もあります。そこまでいかずとも、シングルで生きる人が増えている実態に合わせて、さまざまな制度を見直すように今後、議論が起こるでしょうか。

「多くの独身者について、結婚希望がかなわないまま未婚化している状況のため、そこに対して課税するというアイデアは当然、大きな反発があるだろう。ペナルティー的な発想ではなく、結婚をして子供を持っている人に税的なメリットを与える政策のほうが現実的だ」

「たとえばフランスでは家族税制をとり、世帯収入を世帯の親・子の数で割って税率を決定する。当然、子供の数が多いほど税負担が緩和される。日本はフランスや北欧諸国に比べて(所得税や住民税などの)直接税の割合が高いからこそ、その構造を変えた場合の国民へのメッセージ性は高い。これまで税計算の変更にかかるコストが大きいなどとして政府が逃げてきた議論ではあるが、結婚も子どもを持つことも自由なこの時代に、あえて次世代を育む選択を決意・実行した人々への応援メッセージになることは確かだろう」

(聞き手は平野麻理子)


シングルの選択
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