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阿部和重「いまを記録するのは作家の役割」

作中の評論はデビュー前に自身が書いたもので「やっと世に出せた」と話す阿部和重

作家生活30年近くで初めて手がけた新聞連載小説で、初めて本格ラブストーリーに挑んだ。連載をまとめた新刊長編「ブラック・チェンバー・ミュージック」(毎日新聞出版)には、北朝鮮情勢に翻弄される男女が描かれている。「現実と小説がリンクする緊張感のあるドラマを展開したかった」と振り返る。

主人公の横口は40歳前の落ちぶれた映画監督で、ヒッチコック監督の映画についての幻の評論を探すハナコに出会う。ハナコは北朝鮮の密使で2人は心を通わせるようになるが、反社会勢力が行く手を阻み、国家の思惑も入り乱れる。

2018年の米朝首脳会談をベースに据えた。舞台を現代日本としつつ、日々の連載で時事トピックを扱うと、現実が大きく動き、ストーリーの修正を迫られるリスクはある。それでも「現在進行形のニュースが載る媒体で、物語が膨らんでいくのは見え方として新しい」と挑戦した。「情報化社会の進展により00年代以降、国際的なうごめきは大きくなっている。どう記録していくかが、同時代の作家としての役割であり、野心もある」

情報の限られた北朝鮮女性をヒロインに描くのには苦労した。「実際に暮らす人たちのリアルな考えは、本や報道では分からない。紋切り型の表現は避けられないが、悪いイメージの再生産に加担しないよう神経を使った」と強調する。

故郷山形が舞台の「神町3部作」を「オーガ(ニ)ズム」で完結させた直後、19年8月から20年12月までこの作品を連載した。その間に新型コロナ禍で世の中は変わった。再び国際情勢が題材の「長い長編」を準備しつつ、作家としてコロナ禍に向き合うのは「避けられない」と考えている。

(あべ・かずしげ=作家)

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