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人口80億人になった地球 これからどうなるのか?

ナショナルジオグラフィック

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世界の人口が10億人に達したのは西暦1804年頃。地球上にホモ・サピエンスが登場してから数十万年後のことだった。

ところが、2011年に70億人になってから、80億人まで10億人増えるのにかかった期間はわずか11年。国連は、最新推計に基づき、2022年11月半ばに世界の人口が80億人に達したと発表した。

80億人突破の日が正確に11月の何日かということはわからない。人口のデータが古い国もあれば、新型コロナウイルス感染症による死者数をすべて記録するのが難しい国もある。世界中の人口を一人ひとり数えるわけにもいかない。

それでも80億という数字の重要性を強調するため、国連は今年11月15日を「80億の日」と宣言した。医療、水質、衛生状態が改善されたおかげで病気の蔓延が減り、世界中で人間の寿命が延びている。肥料や灌漑により農作物の生産量も増え、多くの国で、出生数が死亡者数を大きく上回っている。

しかし、人口増加によって人類が直面する問題は決して小さくはない。海洋汚染や乱獲によって、世界中の海の質が劣化している。開発、農業、林業によって森林やそのほかの自然環境が破壊され、野生生物は驚異的な速さで消滅している。

いまだに化石燃料が中心のエネルギー体制は気候変動を引き起こし、生物多様性や食料の安全保障、飲料水や農業用水はかつてないほどの脅威にさらされつつある。

同時進行する人口爆発と人口崩壊

世界では、同時期に別々の場所で人口爆発と人口崩壊という正反対の現象に直面している。

中国では、過去2000年間維持してきた人口世界1位の座を今年にもインドに明け渡そうとしている。実際、1980年に一人っ子政策を取り入れる前から中国の出生率は減少し始めていた。教育と雇用の機会拡大に伴って、多くの女性が出産時期を遅らせるようになり、出産の機会も減っている。

この傾向はパンデミック中に加速し、2020年に誕生した子どもの数は2015年比で45%減少した。中国の出生率は現在、米国のそれを大きく下回っている。

14億人という中国の人口も、もうすぐ減少に転じると予測されているが、実は既に減少し始めているという見方もある。労働者人口は10年間縮小しており、高齢者および未成年者1人を2人の労働者がやっと支えている状態だといわれている。8月25日付けで学術誌「Nature」に掲載された報告書によると、今後25年以内に60歳以上の人口は3億人に達し、政府の資源が圧迫されるだろうと予測していた。医療費も、2倍になるという。

アフリカでは、これと逆の現象が起きている。サハラ砂漠の南の地域で人口が爆発的に増加しているのだ。ナイジェリアの年齢中央値は中国の半分以下の17歳。出生率こそ減少しているものの、それでも中国の20倍はある。

ナイジェリアの食料の安全保障は、既に脅かされている。国民の3分の1以上が極度の貧困状態にあり、インドを含めて世界のどの国よりも状況は深刻だ。全世帯の3分の1で、他の家族のために大人が食事を抜かなければならない場合があるという。

現在2億1600万人の人口は、今世紀末までに4倍に増え、国土面積が10倍の中国を上回るという予測がある。ただし、全ては出生率にかかっている。予測は全て仮定に基づいており、現実は大きく変わる可能性がある。

出生率を低下させる最も大きな要因は教育、それも女子への教育だ。10年以上前の2011年7月29日付で学術誌「Science」に発表された論文は、世界的に教育の機会を拡大することによって、人口増加を今世紀半ばまでに10億人減らすことができると結論付けた。今後数十年で、この教育の機会をどれだけ速く、どこまで拡大することができるかが、2100年の世界人口を左右するカギとなるかもしれない。

人口はいつピークに達するのか?

短期的な人口予測に関して、専門家の間で意見の相違はない。国連、米ワシントン大学の研究チーム、そしてオーストリアの研究所はいずれも、今後25年間で世界の人口は90億人を超えるだろうと予測している。

だが、それ以上先の予測はそれぞれの機関によって大きく異なる。国連は数年前に、世界人口が2100年までに110億人に膨れ上がると予測していたが、2022年初めにその予測を約104億人に下方修正した。世帯当たりの平均出産数引き下げへの取り組みが功を奏しているためだ。

オーストリアのウィーンにある国際応用システム分析研究所は2018年、世界人口が2070年までに97億人に増え、その後21世紀末には90億人前後まで減少すると予測した。この研究所は、主に世界的な専門家の意見を取り入れ、異なる前提を用いて結論を導き出した。研究所の人口プログラム責任者のアン・グージョン氏は、「出生率だけでなく、乳幼児の死亡率対策における進展にも焦点を当てています」と話す。

一方、ワシントン大学の保健指標評価研究所は、2064年に人口が97億人でピークに達し、その後21世紀末には88億人か、それ以下に下がる可能性があると予測する。また、ブルガリアやスペインなどおよそ20カ国で人口が半減するという。数値が研究グループによって大きく異なる理由は、将来の出生率を予測するために用いる方式が複雑なためだ。

ただし、これらの予測には今のところ、気候変動による人口への影響が十分に盛り込まれていない。世界が温室効果ガスをいかに削減できるかが不透明なうえ、気候変動が人口にどれほどの影響を及ぼすかを見積もるのが難しいからだ。

極端な猛暑によって、今後は中東やサハラ以南のアフリカ、インドの一部では人が住めなくなる恐れがある。食料の安全保障も脅かされるだろう。人口が多い沿岸地域の人々は、海面上昇に脅かされることになる。

気候変動と政治は、世界の人口だけでなく、国家間の人口移動に大きく影響を及ぼす可能性がある。米国や西ヨーロッパの人口は、これまで移民によって維持されてきたが、それが今、政治論争に発展している。日本のように、人口の減少問題を抱えながら、欧米よりも移民の受け入れに消極的な国もある。

いずれにしても、気候変動によって人口が増加する地域と減少する地域がある状況が世界中で移民問題をさらに拡大させることは間違いない。「こうした人口の不均衡を是正する唯一の策は、良く管理された国際協力だけです」と、保健指標評価研究所の人口予測を率いたスタイン・エミール・ボルセット氏は指摘する。

文=CRAIG WELCH/訳=ルーバー荒井ハンナ(ナショナル ジオグラフィック日本版サイトで2022年11月16日公開)

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※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

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