/

作家・中村文則が対談集、桃井かおりから大江健三郎まで

芥川賞作家、中村文則のデビュー20周年を記念する初の対談集「自由対談」(河出書房新社)が刊行された。「縁あって大勢のすごい方と対談してきたので、一冊にまとめたいと思った。まず思い浮かんだのが(中村作品を原作とする映画『火 Hee』で監督・主演を務めた俳優の)桃井かおりさんで始まり、(ノーベル賞作家の)大江健三郎さんで終わるという構成でした」。33人を相手とする36の対談・座談会を「映画・音楽」などのジャンル別に収録している。

別ジャンルの人々と話すことで、新たな小説の読み方を教えてもらったと振り返る。例えば、中村の同名小説を映画化した「悪と仮面のルール」に主演した俳優の玉木宏。「『主人公は一対一の対話が多いですね』とおっしゃられたが、それは演じたからわかることでしょう。(自作をめぐる)文学論としても面白かった」。俳優の綾野剛との対談は2回分収められているが、「2回目の方が親密度が増しているのが伝わってくる」と振り返る。シンガー・ソングライターのあいみょんとの回では「歌詞と音楽が一緒に浮かぶと聞き、言葉が持つ響きとリズムを改めて考えた」という。

政治学者の姜尚中、ジャーナリストの津田大介らを相手にした「社会問題・テクノロジー」という章があるのも、社会派の小説を書いてきた中村らしい。「作家はいろいろなことを言える立場にある。発言する責任があるように思う」

もちろん最も分量が多いのは、芥川賞作家でお笑い芸人の又吉直樹、直木賞作家の西加奈子、作家でタレントの高山一実らを相手とする「文学」のジャンルだ。中村は2002年に「銃」で新潮新人賞を受け作家デビュー、その3年後には「土の中の子供」で芥川賞を受賞、順風満帆にも見えるが「最初の8年ぐらいは苦しかった。それを救ってくれたのが『掏摸(すり)』に与えられた大江健三郎賞。大江さんが評価してくださったおかげで作家として生きられた」。その受賞記念対談が最後に収められている。

ロシア文学者の亀山郁夫とは5回にわたって対談。「亀山さんは僕が大きな影響を受けたドストエフスキーの化身のような存在。そんな方からBunkamuraドゥマゴ文学賞をいただけたのも、大きな励みとなった」と話す。対談や座談会の前には相手の著書を読み込むといった準備も欠かさない。「気付かなかったことに気付けるなど、創作のスキルアップにもつながる」と、こうした仕事に手ごたえを感じている。

(中野稔)

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

セレクション

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン