将棋女流王座戦、里見香奈女流王座連覇か加藤桃子女流三段クイーンか 26日開幕 - 日本経済新聞
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将棋女流王座戦、里見連覇か加藤クイーンか 26日開幕

里見香奈女流王座(30)に加藤桃子女流三段(27)が挑む将棋の第12期リコー杯女流王座戦(特別協力・日本経済新聞社)五番勝負が26日に開幕する。里見女流王座は昨年5期目を獲得し初の永世称号「クイーン王座」を得た。対する加藤女流三段も過去に女流王座を4期獲得しクイーン王座に王手をかけている。女流棋界の第一人者が貫禄を示すのか、2人目のクイーンが誕生するのか。女流王座戦をリードして来た2人が激突する。

里見香奈女流王座 自分のペースで戦う

自分の状態は良くも悪くもないという感じです。大事なところでミスをすることもありますが、それも実力なのかなと。なるべく次に修正できるように、戻していきたい。(不合格となったプロ棋士編入試験については)大きな舞台で敗戦することで成長できる。今後の糧にしたい。

(週2局ペースが続く対局日程について)心配されることも多いですが、中には持ち時間の短い将棋もあるので疲れはそんなにありません。疲れを残さないように勉強しているというか、疲れたらしっかり休むようにしています。研究会は今は月に2回くらい。もっとやりたいですけど、多すぎても自分の準備が追いつかないので。

ここ数年はコロナ禍でなかったですが、今年は久しぶりに地方で対局(第2、3局)させてもらえるということで新鮮な気持ちもあります。

挑戦者の加藤さんは、自分から先攻して局面を動かしてくる。警戒しないといけない。(加藤女流三段からタイトルを奪取した今夏の)清麗戦でも苦しい将棋があった。女流王座戦でも挑戦者になられて充実していると思う。居飛車党で、その時の研究によって急戦も持久戦も両方指される。勢いよく決断よく指されるので、気をつけて自分のペースで戦えるようにしたい。

(振り飛車党の)私はいろんな戦型を指せるわけではないので、似た形になりやすい。お互い(過去に指した将棋を含め)深めに研究することになると思う。勝敗より、将棋の理解度を上げられるような、充実したタイトル戦にできたらと思います。

加藤桃子女流三段 一手一手に集中を

(里見女流王座に3連敗で失冠した今夏の)清麗戦五番勝負はあっという間に終わってしまって、不完全燃焼でした。特に2局目は優勢の時間は長かったですが逆転負け。流れが悪い中で、第3局は力を出し切れなかった。技術面もそうだが、体力・集中力が発揮できなかった。

残っていた棋戦の中で(挑戦の)目がありそうな女流王座戦に向けて頑張りました。失冠のショックもあったが折り合いを付けて一局一局積み重ねる気持ちで指してきた。

ずっと奨励会員だったから分からなかったが、同じ女流棋士になって、改めて里見さんのすごさに気づかされた。女流棋士として長い年月を重ねていくのはすごく尊いこと。里見さんに限らず先輩方はみんなそうですが、女性は結婚・出産・子育てと人生のイベントが多くて、折り合いを付けながら将棋に真面目に取り組んでいる方は皆すごい。さらに里見さんはタイトルをずっと持たれている。本当に尊敬している女流棋士です。

今回はクイーン王座のかかる勝負ですが、そこを目指したいというより、今は里見さんからタイトルを取りたいという気持ちが大きい。それが積み重ねられたら、クイーンが自然とついてくる。そのためには一局一局、一手一手に集中していかないと。

久しぶりの女流王座戦、非常に楽しみ。第1局のホテル椿山荘東京では(2年前の女流王座戦で)記録係をさせてもらいました。タイトル戦に出る時の下見みたいなつもりで、部屋を把握して対局者の雰囲気を感じ取ろうと。そこに行けるのはうれしいです。

塚田恵梨花女流初段が存在感

今期、台風の目となったのが塚田恵梨花女流初段。1次予選で強敵、渡部愛女流三段を破ったのを皮切りに4連勝でベスト4進出の快進撃。準決勝で西山朋佳女流二冠(白玲・女王)に敗れたが存在感を示した。

前女流王座の西山女流二冠は挑戦者決定戦で敗れ4年連続の五番勝負登場はならず。決定戦を終えた直後には「残念な気持ちはありますが実力だと思うので、課題を見つめ直したい」と前を向いた。

加藤桃子女流三段は、本戦進行中に保持していた清麗を里見女流王座に奪われる中で勝ち上がった。挑戦権獲得後の記者会見では「1カ月でよく立て直したなと我ながら思っております」と笑顔を見せた。

展望を聞く 充実期迎える里見、落ち着き目立つ加藤

五番勝負の展望を、北浜健介八段(46)と伊藤沙恵女流名人(29)に聞いた。

――加藤が挑戦権を獲得しました。

北浜 もともと攻めっ気の強い将棋だが、最近は攻勢に出る前に態勢を整える落ち着いた指し回しが目立っており、これが好調の要因とみている。準決勝の上田戦では、戦いが始まってから駒組みを再構築して十分な形に組み替える手順が印象的だったし、決勝の西山戦も左美濃から銀冠に組み替えた後、一気に攻勢に出た手順が巧みだった。

伊藤 決勝戦は快勝と言える内容で、とても印象的だった。昼食休憩辺りまでの時間の使い方などから考えて、全く同じ局面ではなくても似たような形を、奨励会員などとの練習対局で経験していたか、独自に研究していたのではないか。事前の準備力に裏打ちされた積極的な手が目立つ。

――里見の調子をどう見ていますか。

北浜 全棋士の中でも屈指のハードスケジュールだが、どの対局も内容が良い。もともとの中終盤の力強さに加え、序盤研究の深さが好調の要因だろう。棋王戦の古森悠太五段との一戦では、中飛車から居飛車に変化し終始主導権を握って勝ち切った。見事な内容だった。棋士編入試験は3連敗したが、切り替えの速い人なので心配していない。

伊藤 確かに内容が安定している。主に中飛車を採用しているが、毎回、何らかの工夫があり、ときどき中飛車以外の戦法も採用するなど、戦い方のうまさを感じる。対局数が多くても疲れた様子がないのは、疲れを見せないようにしているのか、それとも感じていないのか……。対局しながら一息入れているような雰囲気を感じるときもある。

――戦型予想を。

伊藤 対抗形が中心になるのは間違いない。里見は中飛車が本命だが、たまに違う筋に振るかどうか。居飛車党の加藤は持久戦を目指すのではないか。

北浜 じっくりした将棋が多くなりそうだが、これまでの両者の対戦で現れなかったような急戦調の将棋になる可能性もある。里見の中飛車に対する、加藤の序盤作戦に注目している。

――勝負のポイントは。

伊藤 2人はこれまでに数多く対戦し、互いの手の内は知り尽くしているはず。事前の研究から外れたところでどれだけバランスを保てるかが勝負の分かれ目になりそうだ。

北浜 お互いの研究がかみ合えば、序盤からハイペースの進行になることも考えられる。いずれにしろ中終盤の競り合いで、どちらがペースを握って抜け出すかで勝敗が決まるだろう。厳しい日程が続いている里見のコンディション調整もポイントになる。

――勝敗予想を。

伊藤 今夏の清麗戦五番勝負は里見のストレート勝ちだったが、それを踏まえて加藤も「このままでは終われない」と、相当気合を入れてくるはず。フルセットにもつれ込むことが予想され、加藤にも大いにチャンスがありそうだ。

北浜 加藤が力をつけているのは確かで、簡単に決着はつかないだろう。ただ、里見も充実期を迎えており、一般棋戦で力のある男性棋士に勝っている。最終的には3勝2敗での防衛を予想する。

=文中敬称略

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