彼女の笑顔のために 小説家 桜木紫乃
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信号待ちで、運転席の前をさっと横切ってゆく自転車に目を奪われた。
頭を美しい布(ヒジャブ)で覆い、同じ柄の洋服を着ている女性だった。黒っぽい布に緑の縁取り、キラキラと輝くビジュー。ついつい見とれるくらいの颯爽(さっそう)とした姿で、自転車を漕(こ)いでゆく。
きっとあのスタイルは彼女も気に入っていて、周りにも褒められているんじゃないかと想像した。おしゃれは世界共通のものなんだと、改めて気づいた日...
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