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逢坂冬馬 女性兵士の視点で戦争の実像に迫る小説

独ソ戦は第2次世界大戦の主戦場の一つだった。旧ソ連に従軍し、ナチス・ドイツ軍と戦った女性狙撃部隊がモデルの長編小説「同志少女よ、敵を撃て」で「第11回アガサ・クリスティー賞」大賞を受賞し、念願のデビューを果たした。賞の創設以来、初めて審査員全員に満点の評価を受けた期待の新人だ。

女性兵士の視点で独ソ戦を描いた異色の作品だ。「ソ連が独ソ戦を『大祖国戦争』と表現したように、権力者にとって戦争は国家を称揚する手段になる。その際、都合の悪い真実として隠匿されてきた女性兵士それぞれの人生や内面から戦争の実像に迫りたかった」

ドイツ軍の急襲で母親と故郷の村を失った少女・セラフィマは狙撃兵になる決意をする。訓練学校に集まったのは似た境遇で悲しみを抱える女性たち。過酷な訓練や凄惨な前線を経験しながら、悲しみを敵への復讐(ふくしゅう)心に転化させていく。

「兵士の心情に迫る上で精神的原作になった」のは、ノーベル文学賞作家のスヴェトラーナ・アレクシエーヴィッチが、ソ連に従軍した女性兵士の声をまとめた「戦争は女の顔をしていない」だ。普通の人間が躊躇(ちゅうちょ)なく敵を撃つ兵士に変貌する経過や「女性だけ」という閉鎖的な環境が育む強固な絆と連帯。膨大なオーラルヒストリーに依拠した心理描写も印象深い。

幼い頃から映画監督の宮崎駿や押井守の作品に描かれる兵器やロボットに魅力を感じていたが、「暴力や戦争は人間の暗部だ」と強調する。「この矛盾した態度が小説に深みを生むのだと思う。今後は日常にあふれる暴力を主題に、人間社会を風刺する作品を手掛けるつもりだ」と意欲を見せる。

(渡部泰成)

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