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ノーベル賞の大隅氏「知的好奇心が大切」人文知応援大会

人文学や文化・芸術の研究支援を目指し、企業人や文化人が2019年に創設した人文知応援フォーラムは、国立歴史民俗博物館(千葉県佐倉市)など6機関で構成する人間文化研究機構(東京・港)とともに、3月12日、東京都千代田区の一橋講堂で第2回人文知応援大会を開いた。「人類の未来を考える 人文知における先端と古典の融合」がテーマ。有用性だけが優先される評価システム、「個」を重視しない学校教育など様々な課題が浮かび上がった。

16年にノーベル生理学・医学賞を受賞した東京工業大学栄誉教授の大隅良典氏が「科学の健全な発展を願って」と題して基調講演。受賞対象となった細胞のオートファジー(自食作用)の研究に関して「純粋に知的好奇心から進めてきたものであり、役に立つかどうかを意識する必要はなかった」と話した。

さらに「科学を文化として楽しむ社会になってほしい。芸術やスポーツを役立つかどうかで評価することはなく、科学も経済効果のみの評価から脱却する必要がある」と述べた。研究者はコミュニケーション能力が求められるとし、「それは器用に話すことではなく、自分の思いを理解させる力であり、そのためには幅広い分野に興味・関心を持つことが大切になる」とも指摘した。

続いてパネル討論が開かれ、大隅氏のほか、ディー・エヌ・エー(DeNA)会長の南場智子氏、メディアアーティストの落合陽一氏、国文学研究資料館教授の斎藤真麻理氏、総合地球環境学研究所准教授の吉田丈人氏の5人が議論した。日本の教育に関して「個性を重視しようとする意識が希薄であり、それは変えていかねばならない」との大隅氏の指摘に対し、南場氏も「探究することが学問のOS(基本ソフト)にならないといけない」と述べ、あらかじめ決まっている答えを当てるのではなく問題そのものを探るような教育のあり方が必要との見方を示した。

「ちょっと合理的ではないような心の仕組みを探ったり、より良く生きるとはどういうことかを考えたり。知的欲求のおもむくまま、いつ答えが出るかも分からぬまま研究を進めるのが人文学だと思う」と話した斎藤氏。御朱印のデータセットの作成に取り組んだ学生を例に出し、落合氏は「楽しそうに研究に取り組む若い人を止めないのが大事。それは周りの人々の関心を呼び、理解者の増加につながる」と語った。生態系を活用した防災・減災に取り組む吉田氏は「環境問題に向き合うには一つの学問分野では太刀打ちできない。自然科学だけでなく、人文科学、社会科学の研究者も求められる。連携は大事なキーワードになる」と述べ、「総合知」の必要性を訴えた。

(中野稔)

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