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小林エリカさん 家族小説で歴史と人生の交錯描く

「最後の挨拶」を刊行

放射能をテーマにした小説「マダム・キュリーと朝食を」や漫画「光の子ども」、父の日記と「アンネの日記」を携えた旅の記録「親愛なるキティーたちへ」など、作家・漫画家として時空を重層的につなぐ作品を出してきた。「最後の挨拶」(講談社)は4人姉妹の末っ子・リブロの視点で家族の記憶をたどる小説だ。

父の病と死を巡り、シャーロック・ホームズの物語世界や作者コナン・ドイルの人生、戦争や震災の光景が交錯する。そこに、ホームズ・シリーズの翻訳家で精神医学者でもあった亡父・小林司氏の生きた痕跡が立ち現れる。父を亡くしたのは2010年。「この10年どうしても書けなかった父の話を、ようやく言葉にできるようになってきた」

物語のはじめに置いたのはホームズの翻訳をともに進める父と母の姿だ。幼いリブロの目を通し、自身の大切な記憶を描き出す。「私が見ていたのは英語を日本語に訳すだけではなく、いないものをこの世にうつすというもっと大きな『翻訳』だった。人の命は限られているが、言葉があれば、読む人のなかで生き返ることができる」

一方で、むしろ言葉に残されなかったものにも思いをはせる。「(自身がこれまで)書けなかったものや、誰かの手で書かれることのなかった人生に最近は興味がある」。10代の父が書いた日記や祖父が残した写真に心引かれるが、調べるほどに分からないことも増えていく。「全てを書き切れないというのが、この作品で書きたかったことかもしれない」

「大きな歴史的事実に見えるもののなかに、一人ひとりの人生がある」。そんな視線が作品に奥行きを与え、静かな感動を呼ぶ。

(桂星子)

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