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王になったクマの物語 イタリア奇才の童話がアニメに

クマと人間がともに暮らす国でクマが王になる――。幻想的かつ不条理な作風で知られたイタリア文学の奇才、ディーノ・ブッツァーティが1945年に発表し、長く読み継がれている童話が初めてアニメーションになった。「シチリアを征服したクマ王国の物語」と題した映画は、2022年1月14日から日本公開される。

かつてウォルト・ディズニーも熱望したといわれるアニメ化を実現したのは、フランス在住のイタリア人アーティスト、ロレンツォ・マトッティ(67)。監督のほかグラフィックデザイン、共同脚本を手がけた。「ブッツァーティは私にとってずっと大切な作家。物語の語り口はもちろん、彼の描く挿絵も好きで、長編アニメを考えた時にまず思い浮かんだのがこの作品だった」。それまで誰も映画化の許諾を得られなかったが、アニメ化を想定して描いたイラストやデッサンを携えて、当時存命だったブッツァーティ夫人に面会。「どれだけ彼の作品を愛しているかを伝え、許しを得ることができた」という。

舞台は古代のシチリア。山奥で暮らしていたクマの王レオンスは、猟師に連れ去られた息子を探すため仲間とともに人間の街へ。魔法使い、幽霊や化け猫などが現れる冒険を経て、レオンスは息子を取り戻す。「原作の構造と細部を大切にしたかった」と語る。「原作はバラエティー豊かな逸話が盛り込まれている。奔放な想像力を尊重し、軽やかな語り口を生かしつつ一貫性を持った物語にした」という。

クマのレオンスは暴力的な独裁者だった人間の大公に代わり王となるが、次第に国を治める難しさを露呈する。「クマたちは権力志向など人間の悪い部分に染まっていく。実直なレオンスはそうした複雑な現実社会を理解できず、国民をコントロールできなくなる。自然の純粋さ、美しさが失われてしまうというブッツァーティの世界観が現れている作品だと思う」

大学で建築を学んだマトッティは新聞や雑誌でイラストを描き、82年にバンドデシネ(漫画)作家としてデビュー。絵本やアニメにも活動の場を広げる。今回の映画は鮮やかな色使いと陰影に富んだグラデーションが印象的だ。「ブッツァーティの描いた挿絵に私自身の味付けをした。絵本やおとぎ話の雰囲気を大切にするため、現実的なものに見えないよう心がけた」という。「漫画とアニメ映画ではリズムの違いがある。少し前に戻って読み返すことができる漫画は『空間のリズム』があり、漫画のように遡れない映画は『時間のリズム』がある。私にとって難しい作業だったが、プロのアニメーターと集団作業で困難を乗り切った」と満足そうに話した。

(関原のり子)

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