この記事は会員限定ですくたかけ 小池昌代著
母・娘・祖母と奇妙な指圧師
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位置エネルギーという言葉をご存じだろうか。空中の一点にあるものは静止していても重力分のエネルギーを保有していることを示す語である。本作の登場人物たちはみなその位置エネルギーのような静かな質量を内在させている。だから動きは少なくても中心の佐知も娘の麦も母親もとにかく重い。ロシア文学中でも重いトルストイの「イヴァン・イリイチの死」あたりと比べても見劣りしないほど。
郵便局に勤める佐知は麦とふたりで海...
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