2年ぶりJAPAN JAM コロナ下の音楽フェスに光明

大型連休の2~5日、野外音楽フェスティバル「JAPAN JAM」(千葉市蘇我スポーツ公園)が2年ぶりに開かれ、4日間で全75組が出演した。新型コロナウイルスの感染が広がるなか、安心安全な音楽フェスをどう実現していくか、試金石として注目を集めた。
「この40年間でここまで音楽が危機的なのは初めて。感染症がないフェスが作れると、皆さんと証明したいと思います」。主催者を代表してロッキング・オン総編集長の山崎洋一郎が呼びかけると、大きな拍手が起きた。感染症対策で歓声や合唱は禁止だが、観客は手を振ったりたたいたりしてステージを盛り上げる。コロナ下のフェスを協力して成功させようという一体感に包まれていた。
千葉市が「まん延防止等重点措置」の対象となる前にチケットが発売されたため、観客は1日1万人ほど。例年は1日3.8万人を動員し、広大な敷地が売りだけに、人と人の距離にはゆとりがある。強い海風が絶えず吹き、空気がよどむこともない。客席の前方エリアは1人1㍍四方の枠に区切られていて、安心してライブを楽しむことができた。飲食エリアでもスタッフがひっきりなしに座席の消毒をしているのが印象的だった。
力強いロックンロールで会場を熱気に包んだのが、サンボマスター。ギター・ボーカルの山口隆が「ルールを守ってかかってこい!」「心の中で叫べ!」とほえると、客も負けじと大きな手拍子で応える。人気曲の「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」、昨年発表した「花束」など、直球のメッセージが生の音楽を待ちわびていた人たちに突き刺さった。

アイドル勢の活躍も目立った。最終日の4日目のトップバッターを務めたアイナ・ジ・エンドは女性6人組グループ「BiSH」のメンバーで、2月にソロアルバムをリリースしたばかりだ。陰影を帯びたハスキーな歌声が頼もしい。ステージ中央に置いたソファに腰掛けたり寝そべったりしながら、全身で音楽を楽しんでいた。
大トリを務めた宮本浩次は貫禄のステージを見せつけた。カバー曲「異邦人」「ロマンス」などを披露し、艶やかで伸びのある歌唱と力強い叫びを自在に行き来する。全曲に全身全霊でぶつかる姿勢に心を打たれた。MCでコロナ禍に来場した観客への感謝を口にするアーティストが目立ったなか、そんなことはヤボとばかりに、ただ「みんな、いい顔してるぜ」とだけ語りかけていたのが彼らしくて良かった。
一方、感染症対策の課題も見えてきた。人気者のステージの前後では、前方エリアのすぐ外で混雑が生じがちだった。1日目には雷雲が近づき、休憩場所のフクダ電子アリーナに観客全員が避難する場面があったが、階段など狭くなっている場所は一時的に人が集中していた。終了後の退場時も同様だ。誘導方法や動線の改善点を洗い出し、夏の音楽フェスに向けて知見を生かしてほしい。
(北村光)