薔薇の花、悲恋の香 詩人 山崎佳代子
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5月のベオグラードは、緑に光る。大通りの裏の閑静な集合住宅に、ジージャとブークは住んでいた……。サラエボからベオグラードに移り住んだ私は、文学部の修士論文のテーマに、ボスニアの悲恋詩「オメルとメリマの死」を選んだ。ジージャことハティジャ・クルニェビッチは文学研究家、ボスニア口承文芸が専門だ。連絡をとり、家を訪ねる。ベルを押すと、元気な声が響き、金髪のポニーテールに青い瞳、少女のように小柄なジージ...
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